字が汚い!  新保信長  2017.7.25.

2017.7.25. 字が汚い!

著者」新保信長 1964年大阪生まれ。東大文心理学科卒。流しの編集者&ライター。阪神タイガースファン。『SPA!』などの雑誌に携わりつつ、単行本やムックの編集・執筆を手掛ける。著書に『東大生はなぜ、「一応、東大です」と言うのか?』『笑う入試問題』他

発行日           2017.4.15. 第一刷発行
発行所           文藝春秋

初出:『季刊レポ』Vol.12(2013年夏)20(2015年夏)に連載の『乱筆乱文にて失礼いたします。』を改題、大幅に加筆のうえ再構成したもの

字の汚さには定評のあるコラムニストの石原壮一郎氏、
女子高生みたいな字を書くゲッツ板谷
デッサン力で字を書く画家の山口晃
手書き文字を装丁に使うデザイナーの寄藤文平氏らに話を聞き、
作家や著名人の文字を検証し、ペン字練習帳で練習し
ペン字教室にも通った。その結果、
著者の字はどう変わったのか・・・・・!?


第1章        なぜ私の字はこんなに汚いのか?
石原壮一郎の字の汚さは"病気レベル
ゲッツ板谷は元暴走族。マス目にきっちり収まった几帳面で可愛い字を書く。きれいな字と言われるより読みやすいと言われる字を目指す

第2章        練習すれば字がうまくなるのか?
文字の中心を揃える、文字の大きさのバランスを意識する
まっすぐな線が引ければ時はうまくなる
山口晃は、藝大時代、字が汚いと言われてデッサンをしながら字を書いて改善した

第3章        字は人を表すか?
悪筆No.1作家は石原慎太郎で、自筆原稿はすべて行の右余白に編集者によって書き直されている
夏目房之介によれば、ナマの文字を書くという行為は、自意識と直結しているのかもしれないといい、実際直筆原稿を見ていると、その人の感情や思考、その経路や形式が造形的に感じられる例に出会う
筆跡を変えれば性格も変わる!?

第4章        字にも流行があるのか?
寺子屋で使われた教科書の一例が『商売往来』⇒ 日常生活に必要な手習いは、漢字は行書を読み、書く必要があるところから、漢字がすべて行書で書かれている
半分くらいしか判読できないが、当時は子供でもこれを読んだり書いたりしていた。昔の人は凄いと思ったが、アメリカ人の子どもが英語をしゃべるのに感心するようなものか
明治期には、近代的活版印刷と硬筆の普及により、楷書がオフィシャル文字となり、1888年の『小学校習字貼』では楷書、行書、草書の順に習う構成となっている
1900年小学校令では、習字は国語科に統合、「書キ方」と称され、以降学校では実用教育
として「硬筆で楷書を書くこと」が主となり、毛筆で行書、草書を書くことは芸術の範疇に

第5章        「うまい字」より「味のある字」をめざせ!



書評)『字が汚い!』 新保信長〈著〉
2017640500分 朝日
 上手になりたい!50代特訓ルポ
 タイトルを見た瞬間、自分がこの本を書いたのかと錯覚した。
 字が汚い!
 実に身に覚えがある。
 書き初め後にみんなで記念撮影したとき、自分の字が映らないよう半紙をふり回していた小学校時代の記憶がよみがえる。
 「お前、なんで踊ってんの?」と同級生にふしぎがられたのである。いろいろ事情があるんだよ!
 きっと同じように身につまされる人は多いはず。
 著者はあるとき自分の字に軽く絶望し、上手(うま)くなろうと決心、まずは30日間の特訓を試みる。だが、五十路(いそじ)に至るまで汚かった字が30日できれいになるはずもない。もっと根本からやり直さないとだめだと、次はペンにもこだわり、教室にも通いはじめる。
 それでもなかなか上達せず、せめて味のある字が書きたいとヘタウマ字にも探りを入れる。まったく身につまされる展開だ。われわれはみなそうやってヘタウマ方面に希望を抱くのである。もしくは開き直る。壮絶に字が汚いコラムニストの石原壮一郎氏の言葉が素晴らしい。
 「きちんとした字を書く人は世間様に恥ずかしくないきちんとした人間じゃなきゃいけないみたいなことを考えているわけですよね。(中略)じゃあそれが面白味のある大人なのかと」
 あはは。単なる逆ギレとしか思えないが、今となっては心の手本にしたい。
 本書には字の練習と並行して、政治家や作家、スポーツ選手の字を参照したり、字の先生や下手な人へのインタビューを行ったり、かつて流行(はや)った丸文字のその後やサインと印鑑の関係など字をめぐる考察も多く収録されている。欧米では字の美醜へのこだわりがないという話は意外だった。
 最終的に著者は味のある字に到達できたのか。写真が載っているので、ぜひ自分の目で確かめてほしい。終始笑える楽しい本だが、涙なくして読めなかった。
 評・宮田珠己(エッセイスト)
     *
 『字が汚い!』 新保信長〈著〉 文芸春秋 1404円
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 しんぼ・のぶなが 64年生まれ。編集者・ライター。著書に『東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか?』など。



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