高雄病院の「糖質制限」給食  江部康二  2014.10.18.

2014.10.18. 糖尿病・肥満を克服する 高雄病院の「糖質制限」給食

著者 江部康二 内科医/漢方医/()高雄病院理事長。1950年京都府生まれ。74年京大医卒。74年から京大胸部疾患研究所第一内科(現同大呼吸器内科)にて呼吸器科を学ぶ。78年高雄病院医局長、00年理事長、01年から糖質制限食に取り組む。自ら糖尿病と気づき「糖質制限食」の体系を確立、自身の病を克服

発行日           2012.4.16. 第1刷発行
発行所           講談社

2014.10.6. 森篤史君からのメール
メール拝見しました。
食事制限に入られているようですが、実は小生も2年前に血糖値の高さを指摘され食事制限と体重の減量を指示されました。
そのときたまたま NHKの番組で京都高尾病院の糖質制限に関する番組を見て 下記の本を買ってきて それを試しました。
これと11万歩の歩行の組み合わせのせいか、体重は12キロ減り、HbA1Cも9.5から6.2まで下がりました。
(医師はまだまだきをつけろと言っていますが)

糖質制限食についてはいろいろと批判もあるようですが、とにかく小生の場合は少しは効果があったように思います。
ご参考までにお知らせします。

講談社 「高尾病院の糖質制限給食」江部康二・高尾病院理事長 著 
森 篤史


従来の糖尿病食(糖質60)を実践する限りは、食後高血糖が必ず生じる
そのため、食事療法・運動・服薬・インスリン注射などを行っているにもかかわらず、糖尿病腎症による腎不全で人工透析になる患者が年間16271人いる
本書の「スーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56)を実行すれば、薬に頼らず、速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能

糖質制限食とは、米飯、麺類、パンなどの米・麦製品や芋類などの糖質が多い食品を食べないで、肉や魚介や豆腐や葉野菜などをしっかり摂取する食事療法
脂質やたんぱく質はOK、酒も蒸留酒や辛口のワインや糖質ゼロの発泡酒ならOK

従来、糖尿病治療食の基本だったカロリー制限=脂肪制限では、糖尿病は治らない
食後高血糖のほうが、慢性的な高血糖状態より、血管内皮を傷つけやすい ⇒ 活性酸素が大量に発生し、様々な細胞に酸化ストレスを与えるため
食後血糖値と1日の平均血統変動幅を速やかに改善するのが糖質制限食

「糖質制限」生活10か条
1.   タンパク質や脂質はOK
2.   糖質は極力食べない。食べるなら未精製の穀物を少量 ⇒ デンプンや砂糖はNG
3.   果汁・清涼飲料水は飲まない ⇒ 牛乳・ヨーグルトは100ml/(糖質5g)まで
4.   野菜、海藻、きのこはOK ⇒ ドライフルーツはNG、果物は少量に。根菜は要注意
5.   油脂はオリーブ油やエゴマ油を使用 ⇒ マヨネーズ、バターはOK
6.   お酒は焼酎、ウィスキーなどの蒸留酒を飲む ⇒ 糖質ゼロ発泡酒、辛口赤ワイン、白ワインでも超辛口ならOK。大量飲酒で低血糖になることもあるのであくまで適量
7.   間食、おつまみはチーズ類やナッツ類を適量ならOK
8.   甘みはラカントSや、パルスイート(カロリーゼロ)を使用 ⇒ 甘味料はエリスリトールが一番安全
9.   果物は季節の旬のものを少量
10. 美味しく楽しい食生活を目指し、できるかぎり安全な食品を選ぶ ⇒ 食品添加物は少なめに
高雄病院食生活10か条(1984)
1.   主食は未精製の穀物(玄米、全粒粉のパンなど)を運動量に応じて適量
2.   白パン・白砂糖など精製炭水化物の摂取は極力減らす
3.   発酵食品(味噌、漬物、納豆など)をきちんと食べる
4.   液体でカロリーを摂らない(飲み物は水かほうじ茶など)
5.   魚介類はしっかり食べ、肉類は適量を摂る
6.   季節の野菜や海藻はしっかり食べ、旬の果物も適量摂る
7.   オリーブ油や魚油など身体に良い油脂は積極的に摂る
8.   牛乳は減らし、チーズやプレーンヨーグルトは適量摂る
9.   できる限り化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ
10. 食事は楽しく、ゆっくり、よくかんで


「炭水化物=糖質+食物繊維」 ⇒ 食物繊維は血糖値を上げない



高雄病院のホームページより
 糖質のコントロールを主とした画期的な糖尿病食事療法、糖質制限食。糖質制限食の基本的な考え方は、血糖値を上昇させる糖質を制限し、たんぱく質を中心に摂取することで血糖値の急激な上昇を避ける糖尿病・メタボリックシンドロームのための食事療法です。

糖質制限食について
血糖を上昇させる糖質をコントロール
糖質制限食を実践するにあたって
糖質制限食にオススメの食材
糖質制限食について
糖質を考える画期的な食事療法
 糖尿病の治療は、1に食事、2に運動、3に薬といわれています。 ですが、毎日、バランスを考えカロリー計算した食事療法を守り、運動をしていても血糖コントロールがうまくいかない患者様がおられます。
 そういう患者様に今までとは違う画期的な食事療法である糖質制限食をお薦めします。
 糖質制限食の基本的な考え方は、出来るだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるイメージになります。抜く必要がある主食とは、米類、麺類、パンなどの米、麦製品や芋など糖質が主成分のものです。
糖質制限食実践の3パターン
スーパー糖質制限食
朝食、昼食、夕食の三食とも主食を抜く。効果は抜群で早く、糖尿病や肥満、メタボリック症候群を速やかに解消したい方にオススメします。
主食とは、米飯・めん類・パンなどの米・麦製品やいも類などの糖質を多く含む食品の事です。
スーパー糖質制限食
朝食と夕食は主食を抜き、昼食のみ主食をとるパターン。糖尿病や肥満の解消を目指したいが、どうしても昼食に糖質制限食を行うのが難しい方へ。
スーパー糖質制限食
夕食だけ主食を抜く、ダイエット目的として行う場合や、嗜好的にどうしても炭水化物が大好きでやめられない方に。糖尿病患者様にはスーパー糖質制限食もしくはスタンダード糖質制限食をオススメします。
糖質制限食を実行する場合の注意点
 糖質制限食は開始直後から効果があるため、 経口血糖降下剤内服やインスリン注射をしている人 低血糖発作を起こす可能性があります。 そうした方は、かならず医師と相談し、出来れば入院して糖質制限食を行って下さい。
また、腎機能の低下している人には糖質制限食は適していませんのでご注意下さい。
血糖を上昇させる糖質をコントロール
血糖値を上昇させる糖質
 一般的な糖尿病の食事療法として「男性は1600kcal、女性は1200kcal」と言う風に、日本ではカロリー制限優先の画一的な方法により対応しています。
一般的な糖尿病食は「高糖質、低脂肪食」で対エネルギー比で糖質約57%、脂質約25%、蛋白質18%程度です。
しかし三大栄養素のうち血糖を上昇させるのは糖質のみであり、カロリー制限よりも摂取食物の質のほうが本質的に重要です。

3大栄養素と血糖値
   食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わり、タンパク質・脂質は血糖に変わらない(表1)。糖質は摂取直後から急峻に血糖値を上昇させ2時間以内にほとんどすべてが吸収される。一方蛋白質・脂質は血糖値に影響をあたえない。1997年版のLife With Diabetesでは、「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」という記載があるが、2004年版では削除されている。これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質であり、現在問題とされているグルコーススパイク(食後高血糖)を引き起こすのは3大栄養素の中で糖質だけである。従って糖質を摂取しなければ食後高血糖は生じず、血糖値はリアルタイムに改善する。一方カロリー制限をしても糖質を摂取すれば必ず食後高血糖を生じる。
糖質制限食を実践するにあたって
糖質とは一体なにか?
 糖質とは炭水化物から食物繊維を引いた残りの栄養素です。糖質と聞くと砂糖やお菓子のみを思いうかべる人が多いですが、一般的に主食と呼ばれる炭水化物などにも多く含まれています。たとえばご飯や小麦粉を多く含むパン、麺、また、じゃがいもやかぼちゃなどにも多く含まれています。

 日本酒などが多く含まれるみりん風調味料、ソースやケチャップなどにも意外に多く含まれている場合があります。
糖質制限食にオススメの食材
糖質の低い食材とは?
 大豆、お魚、お豆腐、チーズ、お肉などのたんぱく質や脂質が主成分の食品や海草、きのこ類は糖質が低く血糖値の急激な上昇をおこさない。それに比べて白砂糖やパン、ごはん、麺類、菓子などの精製された穀物を多く含む食品は糖質が高いので注意しなければならない。とくにビールや牛乳、果汁ジュースなどは吸収がよいため急激な血糖値の上昇を招くので要注意です。水やお茶、アルコール類なら蒸留酒(焼酎、ウイスキー、泡盛など)は糖質がないので糖質制限食に問題ありません。


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「糖尿病徒然日記 」として糖尿病治療や予防などをテーマに、私なりの意見や情報を発信していきたいと思います。
20141017 (): 血中1,5-AG値の意義。糖質制限食と血中1,5-AG値。

血中1,5-AG値と糖質制限食について、時々質問があるので復習を兼ねて、考察してみます。
合わせて血中1,5-AG値の意義についても考察してみました。

1,5-AG
は、ブドウ糖についで多い単糖で、広く生物界に存在します。
食物から経口的に摂取され、腎臓でほとんど再吸収され、ごく一部が尿中に排泄されます。

栄養素としての働きはほとんどないようですが、ブドウ糖と同じように血液中にいつも一定量存在しています。また体内の各臓器に広く分布しプールされています。食事からの供給量に比べて体内蓄積量が大きいので、通常は食事の前後で血中濃度の差はありません。

血中1,5-AGは、フルクトサミンやグリコアルブミンやHbA1cではチェックできない
食後高血糖の状況をしることができます。

高血糖があり尿中にブドウ糖が排泄されるようになると、1,5-AGも尿中に排泄されるようになり、結果として血中の1,5-AGが低下します。

これはブドウ糖と1,5-AGとは構造が似ているため、腎の尿細管での1,5-AG再吸収がブドウ糖により競合阻害されるためです。

従って、基本的には
「尿糖が陽性であるから、血中1,5-AGが低下する」という公式が成り立ちます。
ほとんどの場合は、食後高血糖のような短時間のスパイク状の変化の影響を鋭敏に反映しています。

しかし、例えば高血糖がなくても尿糖が陽性になる腎性糖尿でも1,5-AGが低下します。

また、最近話題のSGLT2阻害薬でも、一日に100gのブドウ糖が尿中に排泄されるわけですから、血中1,5-AGは著明に低下すると思われます。
すなわち、SGLT2阻害薬を内服している人は、血中1,5-AGを調べても意味がないということです。

「尿糖が陽性であるから、血中1,5-AGが低下する」という公式の例外として、飢餓があります。
高血糖もなく尿糖もなくても食事から摂取される1,5-AGが飢餓により枯渇したために、血中の1,5-AGが低下することとなります。

なお、血中1,5-AGは妊娠、慢性腎不全、重症肝硬変でも低下します。
また、アカルボース(グルコバイ)内服中の人も低値を示します。

1,5-AG
はいろんな食材に含まれているそうなのですが、どのような食材に多く含まれているのか調べてもはっきりわかりませんでした。

しかし、植物体のなかでデンプンから1,5-AGが生合成されるとの文献がありましたので、どうやらデンプンの多い食材に1,5-AGが多く含まれいるようです。

そうすると 糖質制限食をある程度長期間実践していたら1,5-AGを多く含む食材の摂取が減るので、血中1,5-AGが生理的に低下しても不思議ではありません。
この場合生理的な低下なのでまったく問題はありません。

保険診療では1,5-AGは、HbA1c、グリコアルブミン、フルクトサミンと同じ範疇の扱いを受け、
いずれか1つの項目を月1回に限ってしか認められていません。

高雄病院ではHbA1cを調べていて、血中1,5-AGは調べませんので、糖尿病患者さんのデータがありません。

糖質制限食と血中1,5-AGに関して興味がありましたので私自身で調べてみたところ、
2008423日の江部康二の血液検査、スーパー糖質制限食6年目>1,5-AG5.8μg/ml(基準値は1243)  と立派に低値でしたが、勿論生理的なもので何の問題もありません。

結論です。
1)一般的には、血中1,5-AGは、食後高血糖(尿糖)があると低下するマーカーである。
2)従って、HbA1cが正常でも、血中1,5-AGが低値なら食後高血糖を見逃している可能性がある。
3)SGLT2阻害薬を内服中の糖尿人は低値となるが問題はない。
4)アカルボース(グルコバイ)内服中の糖尿人も低値となるが、問題はない。
5)血中1,5-AGは妊娠、慢性腎不全、重症肝硬変でも低下する。
6)糖質制限食実践中であれば、血中1,5-AGは低値となるが、問題はない。



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