トップシークレット・アメリカ  Dana Priest & William M. Arkin  2014.7.22.

2014.7.22.  トップシークレット・アメリカ最高機密に覆われる国家
Top Secret America ~ The Rise of the New American Security State  2011

著者
Dana Priest ワシントンポスト紙に約25年勤務、インテリジェンスや軍関係、医療制度改革などを担当したベテラン記者。ブッシュ政権時代にCIAの秘密収容所を暴いたレポートなどでピュリッツァー賞2回受賞、ノンフィクションでノミネート1回、その他ジャーアンリズム関係の主要な賞をすべて受賞した経歴を持つ。ワシントン在住
William M. Arkin 元アメリカ陸軍情報局の分析官。湾岸戦争以来、国防長官府、CIA、空軍などのためにイラク、ヨルダン、旧ユーゴ、アフガニスタン等で、空爆の被害の実態を調査。アメリカ空軍軍学校先進航空宇宙研究大学院で教鞭、2000年代にはイスラエルのレバノン侵攻後の国連現地調査団のアドバイザー、国連事務総長室のイラク関係のコンサルタントなどを務めている。NBCニュースの軍事アナリストや、ロサンゼルス・タイムスやワシントンポスト紙のコラムニストとしても活躍。ヴァーモント州在住

訳者 玉置悟 1949年生まれ。都立大工卒。音楽業界で活躍後、78年より米国在住。駐在員、リサーチ会社勤務などを経て翻訳家

発行日           2013.10.29. 第1刷発行              2014.1.6. 第3刷発行
発行所           草思社

9.11以降、テロとの闘いという大義名分のもとに、アメリカでは雨後の筍のように機密機関が生まれ、膨大な「最高機密」を扱うプログラムが立ち上げられた。1200を超える政府組織、25万人以上の従業者、実に85万人以上の人間が何らかの「最高機密」にアクセスしているという異常事態となっている。無数の最高機密に覆われ、ジャングルのごとき迷宮と化したアメリカの現実を、ワシントンポストのベテラン記者らが精緻な取材によって暴き出す。
いずれ日本もこうなるのか!?

序章 永遠に続く警戒態勢
9.11当時はアルカイダについてほとんど何もわかっていない状態だったが、以後の10年間に情報機関や治安当局はハイテク監視システムや情報分析の分野で大きな進歩を遂げたにもかかわらず、特に理由もないまま警戒レベルイエロー”(テロ攻撃の非常に高いリスクあり)を維持したまま、国土安全保障に関係する膨大な数の組織を抱え続けている。
筆者は、その原因を、政府がテロとそれに対する適切な対処法についていまだに国民と正直な会話を交わしていないことにあると考え、そうした対話を促進する一助として本書を書いた
2010年 ワシントンポストが、同じ題名の記事を連載。情報ソースは公開されたものばかりで、事前にそのデータを政府に見せたところ、国家情報長官府より安全保障を棄損する恐れがあるとの理由で掲載取り下げの要請があった。
今回は、当時よりはるかに多くのことを書くことができ、出版社に感謝
たくさんの機密情報が当局の許可なく暴露されてきたが、そのためにアメリカの安全保障が打撃を受けたことはない
政府が国民の眼に見えないところで、納税者の金を意味のないプログラムや、国の安全に貢献もしていない請負業者たちにジャブジャブと与えられ続けたことの方が、テロを防ぐ努力に対しても。我が国の経済や戦略的な目標に対しても、ずっと大きな損害を与えている
アメリカ政府は、9.11以降アル・カイダに対する闘いを戦争と呼ぶことにより、その闘いに関するあらゆることを機密扱いにすることを正当化できるようになった(全ての決定が平時の法に優先)

CIAの極秘プログラム「グレイストーン」。テロ容疑者の拘束・尋問・返送などのプログラムや、容疑者を外国に運ぶ輸送機の用意からそれらの国の秘密収容所の運営に関する兵站プログラムなどを含む。最初に作戦が行われたのは、アル・カイダやその連帯者がいると考えられた国
本書の目的は、国家による機密保護の無軌道な膨張に対し、「より高い透明性と、活発な討論こそ、わが国をテロやその他の危険から守る唯一の方法」であることを示すことであり、10年以上にわたって続いたテロの恐怖の時代を終わらせ、我々が何を守っているのかをもう一度考え、より開かれた、より良い安全保障を追求する、新しい時代の幕を開けなければならない

第1章        トップシークレット・アメリカ
9.11直後、ブッシュ政権が破壊された現場の復旧とテロリストへの報復のための緊急支出をアメリカ議会に求めたが、その額200億ドルで今後も無期限に必要というものだった。議会は数日のうちに超党派で要求の2倍の支出を承認、続けて追加の400億ドルも承認
1年後のイラク攻撃準備のための軍需物資の増産・備蓄が始まり、膨大な額の予算が請求され、新たな支出の大部分がインテリジェンス・コミュニティのさまざまな機関・組織に追加された
共著者で元陸軍情報局の分析官だったアーキンは、インターネットがまだなかった80年代、ヨーロッパに駐留する米軍が所有する核兵器の秘密の保管場所を、一般に公開された情報源を使って突き止めペンタゴンを激怒させた
「ビジー・ロブスター」のように意味のない言葉を2つ繋げた暗号名が登場(軍事作戦では暗号名に何らかの意味を持たせていた)、機密を扱う資格を求める求人広告にもNSAが機密指定したたくさんの暗号名が堂々と掲載され、ネットで調べたその数は毎日15千件にもなるという
暗号名を辿るだけで、トップシークレットを扱う民間企業の名前や場所、仕事内容などが浮き彫りとなり、膨大な金が民間企業に流れていることが推測される

第2章        あなた方が知る必要があるのはそれだけだ
アル・カイダに対する秘密作戦の爆発的な増加とともに、徐々に秘密漏洩が始まる
テロ容疑者を拘束する秘密収容の存在や、そこでの捕虜虐待の実態も明らかに
CIAの対テロセンターのトップが上下両院の情報委員会で、テロ容疑者への新しいやり方を認めた際に、「あなた方が知る必要があるのはそれだけです」と傲然と言い放ったことに注目
02年 アメリカの無人偵察攻撃機のミサイル攻撃により、イエメンのアデン港に停泊していたアメリカ海軍の軍艦への自爆攻撃をした犯人の殺害に成功
アメリカでは何十年も前に暗殺が非合法化されており、無人機による攻撃の合法性に疑問の声が上がる
議会でも、通常レベルの秘密ブリーフィングを受けることができるのは、上下両院の情報委員会と、予算を決める国防歳出小委員会の委員のみ ⇒ テロに関することは全て機密指定されてしまうという状況の中で、じっくり読んでも見落としそうな小さな脚注がいくつもついているレポートは極端に読みにくく、情報機関の行動を監督する義務が十分果たせていたとは思えない。イラク攻撃が現実味を帯びてきたときの「国家情報予測」にも、脚注の形で、「イラクが大量破壊兵器を保有しているという報告には大きな疑いがある」という国務省情報及び調査局の重要な異議が付されているが、問題にされることはなかった
機密文書の管理は、「国立公文書記録管理局」内にある「情報安全保障監督室」が行うが、僅か23名の職員で9.11以降だけでも23百万点に膨れ上がった文書の扱いに奮闘している
それぞれの秘密プログラムが細分化されていて、それぞれにアクセスできる人が限られている                                                                                                                  
秘密は必ず漏れる ⇒ 東ヨーロッパ諸国に設置されていたCIAの秘密収容所についても、関係者の一部から存在が示唆され、最終的に閉鎖に追い込まれたが、そこで行方不明になった人の全ての詳細はまだ明らかになっていない

第3章        神に誓って偽りは申しません
09年 オバマの就任演説の締め括りの言葉 ⇒ 歴代大統領が就任演説の最後に言う決まり文句だが、オバマのは印象的
9.11以降、FBIの対テロ部門は以前の3倍に膨れ上がり、対テロ諜報機関としての任務を受け持つ。他の機関、軍との競争も激化し、お互いが組織と権限の拡大を巡って凌ぎを削るようになったため、対テロ機構は莫大な予算を費消する化け物と化した
組織間での縦割りが強固で、お互いに握った情報を機密指定するため、統合参謀本部のトップレベルですら互いに意見をぶつけ合うこともなく、政治指導者達が総合的に判断するための適切な情報が上がってこないという弊害を生む。オサマ・ビン・ラディンに関する情報も、上層部に上がる「国家情報予測」に97年に僅かに触れているに過ぎず、その後はCIAFBI等の情報機関が多くの証拠を掴んでいながら、情報交換することなく9.11を迎える
ホワイトハウス内にも「対テロ安全保障グループ」や「対テロ国家コーディネーター」などが設けられたが、情報の壁は超えることが出来ず、省庁や情報機関に指示する資格もない
CIA内部でも同様のことが起こっていて、トップがいくら組織間の相互協力を説いても現状は不変
93年ニューヨークのワールドトレードセンター爆破、98年ケニアやとタンザニアのアメリカ大使館同時爆破、99年ロサンゼルス空港爆破未遂、00年イエメンでのアメリカ海軍駆逐艦爆破とテロが続きながら、ビン・ラディンに関する機密情報が統合参謀本部のトップシークレットを扱う資格を持つ高官たちにさえ秘密にされていた
アメリカでは未解決の殺人事件が何万件もあるが、大きく騒ぎたてるメディアはいない。他方テロとなると警備の僅かな失敗も取り上げて大騒ぎし、それが国民の不安を煽り、さらなる予算の要求と支出を呼ぶというパターンが延々と続いてきた。テロを"戦争と呼んでいるのはアメリカだけ
オバマは、実質的に2つの異なる政府を前任者から引き継いだ。1つは一般国民の良く知る大体において開かれた政府、もう1つはブッシュ時代に急拡大したトップシークレットだらけの巨大な秘密組織
9.11後に出来た「国家情報長官府」と「国家安全保障省」は、いまだに明確な仕事がなく、職員もアマチュアばかり
オバマは、就任後初の大統領令でグァンタナモのテロ容疑者収容所の1年以内の閉鎖とCIAの秘密収容所の廃止、法に基づかない尋問の中止と、容疑者取り扱いの実態調査をするとし、透明性と開かれた政府を目指して新しい時代の到来を宣言したが、執務室に入った途端大統領の理想主義は急速に消え、オバマ主導による透明性促進で実現したことはほとんどなかった。それどころか、軍産インテリジェンス複合体の巨大組織を受け入れざるを得ず、アメリカの秘密の世界がさらに大きくさらに秘密になっていくのを我慢することになる

第4章        地図に出ていないアメリカの地理
秘密組織はアメリカの地図に載っていない。地図に出ていないアメリカの陰の首都はワシントンの北東約40km、ボルチモア近郊フォート・ミード陸軍基地内のNSA(国防総省に属す国家安全保障局)で、本部に近づくとナビがUターンを指示する
そのほぼ1/2はワシントンD.C.を中心とした大きなトライアングルに集中。ワシントンの北西約70kmにあるヴァージニア州リースバーグ、そこから南に約65km下がったポトマック河畔のクアンティコ、メリーランド州ボルチモア近郊のリンシカムの3か所を結ぶエリア
デンバーやタンパからセントピータースバーグにかけての一帯にも膨大な土地が特殊作戦部隊用に確保されているし、サンアントニオ、セントルイス近郊、ソルトレイクシティ等にも巨大な施設
ビルの標識には入居している秘密組織の名前の表示がなく、それぞれの組織の建物内には内部の会話や通信を傍受・盗聴から遮断するSCIF(スキッフ)と呼ばれる部屋を持つ

第5章        巨大政府と情報のジャングル
9.11以来、アメリカの情報機関は毎年1500種類ものシリーズ形式の機密レポートを作成、発行部数は5万部にもなるが、印刷されたレポートはまったく無駄。2010年レポートの過剰生産の弊害を解決するため「インテリジェンス・トゥデイ」という機密オンライン新聞を作って、さまざまな機関の情報から最適なものを選りすぐって関係者に供給することを決めたが、読み物がまた1つ増えただけの効果しかもたらさず
肥大したシステムの非効率も目立つ 
対テロ作戦、国土安全保障活動、インテリジェンス活動に関係する連邦政府の組織は1074、民間の契約会社は2000、全米17千ヵ所に活動拠点があり、そのすべてがトップシークレット・レベルの業務を行っていた
1074の組織のうち9.11以降に誕生したのが263だが、既存の組織が息を吹き返したのが大きい
組織間の主導権争いも熾烈
作戦の重複が最も甚だしいのが「フュージョンセンター」で、フュージョン(融合)”とは、対テロ組織やその他の脅威の全体像を掴むために情報を縦割り組織の中で横断的に集めて分析することを意味するが、多くの組織に別個に作ったため、ワシントン一帯だけでも31ものセンターがあった
国家情報長官府は、04年にブッシュ政権と議会によって、CIA長官が兼任していた中央情報長官の職を独立させたものだったが、世界各地で難問山積の状況の中最悪のタイミングであり、どの情報機関も人手はもとより、自ら保有する情報を差し出すこともしなかった
ビル・ゲーツが断った長官には外交官のネグロポンテが就任したが、権限もなかったために機能せず、以後毎年のように長官が交代、にもかかわらず組織だけは肥大を続け、無用・非効率の象徴と化す
その穴をついたのが09年デトロイトのノースウェスト航空253の爆破未遂事件。マークされていたナイジェリア人が、空港の警備をすり抜けて爆発物の機内持ち込みに成功、点火した際火を消し止めたのはオランダ人の乗客だった。莫大なカネを費やして膨大な組織を作ったが、対テロ活動の責任を実際に負っている人物は1人もいなかった

第6章        1つの国に地図は1
9.11以降、国防総省が国内の安全保障の動きの中心となる。「アメリカ北方軍」の誕生と、各州の自警団的組織だった54(50+ワシントン特別区+グアム+プエルトリコ+ヴァージン諸島)の州軍を統一された1つの軍隊として機能させるようにした
緊急時に、州ごとに独立していた緊急対応部隊を統合して機能させるには共通の地図を持つ必要があった。「国土安全保障インフラプログラム」と命名して全米の正確な地図作りを始める
北方軍の司令部は、コロラドスプリングスのピーターソン空軍基地内にある。シャイアンマウンテン空軍基地の地下核シェルター内の「北アメリカ航空宇宙防衛司令部」と合同指令センターを作って活動しているが、アメリカには「国内の市民生活に軍を関係させない」という250年も前からの法的・文化的伝統があるところから、文民の領域に足を踏み入れないよう気を使っている
11百万人以上の市民の個人情報を蓄積

第7章        不審な行動を通報せよ
人々は、いつ終わるともしれない対テロの警戒態勢にもはや無感覚になっている
それでもなお、国土安全保障省の女性長官は、「国の防衛や危機に市民が率先して備える伝統を重視するという、1つ前の時代(=冷戦時代)の政策に戻って」全米全ての警察組織に対して情報を送るよう求めている。結果的に、テロとの戦いの戦場が全米の都市に拡大され、各州の警察やその他の法執行機関が連邦政府の対テロ機構に組み込まれ、そこには連邦政府からの補助金が入り続けている
米軍が海外の対テロ作戦で使っているハイテク機器を、メーカーが各地の警察に売り込み始め、それまで見えなかったものが見えるようになったため、各地で奇妙な動きが報告されるようになった
それらの機器の開発には国から補助金が出ていて、開発費はすでに償却されているので、開発した企業にとっては大きな利潤が得られた
フーバーが作った防諜プログラムが乱用されることを防ぐために1978年に出来た法律が守ってきたやり方が、01年の「愛国法」により切り捨てられ、監視体制は大きな一歩を踏み出す。捜査を開始するための用件はずっと緩和され、多くの情報提供者を使って、市民の会話を盗聴し、多くのグループに内通者を浸透させ、市民のEメールや携帯メールを読み、米国市民をスパイして個人情報を集めることを可能にした
本人の知らない間に個人情報を集めることを可能にしたことで、ブッシュ政権はウォーターゲート事件ののちに作られた1974年の「プライバシー法」を骨抜きにした
FBIの米国民を監視するデータベース「ガーディアン」は、不審な行動をしたと報告されるだけで何一つ犯罪を犯していないアメリカ市民や居住者の個人情報を大量(10年時点で16万件)に保存しているところから、常にプライバシー侵害の懸念がある
対テロに関する限り、費用対効果の検証は他の分野に比べてずっと甘い
各地のフュージョンセンターから国土安全保障省にテロの脅威の可能性を伝える細かい情報が尽きることなくランダムに大量に流れ込むが、曖昧で人騒がせなだけで役に立たないことが多いという

第8章        機密を扱う人たち
トップシークレットに関わりなく、アメリカ政府のすべての省庁では機密を扱う資格を持つ職員を必要としている
トップシークレットを扱う有資格者の総数は推定854千人(うち民間人が265)、冷戦時代の方が多かったが、当時は政府職員総数も今の2倍、米軍は5倍、核兵器も3万発を保有していた
9.11以降は民間人の有資格者が多く、厳しい身上検査等の制約から、同じような生活様式で、同じ地域に固まって住む傾向があり、その地域は最も裕福かつ教育水準の高いエリアとなっている

第9章        対テロビジネス
2010年現在、政府のトップシークレットを扱う1900社ほどの企業のうち、約6%の110社がすべての業務の90%を請け負っている
政府組織を大きく見せないため、民間への業務委託が膨張、本質的に政府の機能とみなされる業務ですら、契約企業がこなしている
政府機関から民間へ頭脳流出が続き、同時にそれぞれが担当していた業務も外注に
トップシークレットを扱う要員の募集は引きも切らず、全米で2万件にも及ぶという
軍需産業のコンベンションも頻繁に開かれ、軍産の蜜月関係が維持継続される

第10章     無人機作戦
無人機作戦センターは、アメリカ本土のネバダ州の砂漠の中にある。ターゲットへの攻撃を許可する上級職員のオフィスはワシントン近郊の一等地にある
この10年にわたって行われてきたターゲットの指名殺害の手段として主に使われる無人機ほど、この遠隔操作による革新的で一方的な戦争を象徴する兵器はない
正規軍が軍事作戦を行っている地域では軍が無人機を操作し、それ以外の地域ではCIAが使用
但し、無人機の離着陸やフライトの操作や整備は契約企業が行っていて、一旦ターゲットがミサイルの有効射程距離の範囲内に来たら操縦桿をCIAや軍に渡す
無人機が収集した監視データをシステムに送りこみ、メンテし、運用するスタッフも民間企業の所属

第11章     暗黒物質
米軍の秘密組織「統合特殊作戦軍」の本部がノース・カロライナにある。もともと1980年に作られ、03年改組、無人機もCIA10倍は保有、秘密任務遂行のための組織として機能

終章 1つの時代の終焉
115月 ビン・ラーディンが殺害され、1つの時代が終わる。彼主導のテロリズムの恐怖が理性あるはずの人たちから理性を失わせた時代も終わった
秘密にしておく必要のない最大のものがトップシークレット・アメリカに関する真実
ファイル共有ソフトなどを経由して機密データがいくらでも流出、それを知って専門にチェックしている人がいて、流出した情報がどんどん敵の手にもわたっている
秘密への脅迫観念的な依存は、却って国全体を危うくしている
本当に秘密にしておく必要のあるものは、おそらく大統領の持つ核コード、最先端兵器の開発・生産に関する秘密、生物兵器に使う病原体やその他の特殊兵器、そしてほかの人に代えることのできないハイレベルの情報提供者くらいのもの
だが、最近わが国で行われてきたことは、それとは正反対で、今でも毎日たくさんの新しい機密指定が行われている
オバマになってからも、その年の内に39の新しい対テロ組織が発足、うち7つは海外に新たに作られた対テロ組織とインテリジェンス・タスクフォースで、新しく作られ又は根本的に作りかえられた特殊作戦ユニットと軍情報機関のユニットも10個あった
最近特に著しいのが、サイバーセキュリティとインテリジェンスの市場の拡大

原注
1.    国土安全保障省は11年に警戒レベルの表示に色の名を使う方式を止めたが、全米の多くの空港やその他の政府施設はその後もこの方式を使い続けている
2.    アメリカのインテリジェンス・コミュニティは、大統領令により政府の16の機関を指定  陸海空海兵各軍の情報局、CIA、沿岸警備隊情報局、DIA(国防情報局)、エネルギー省情報部門、国土安全保障省情報部門、国務省情報及び調査局、財務省情報部門、連邦麻薬捜査局、FBINGA(国家地球空間情報局)NRO(国家偵察局)NSA(国家安全保障局)
3.    NSA(国家安全保障局)  52年設立。国防総省に属し、文民と軍人がいる
4.    GWOT(ジーワット)  03年大統領令により「ジーワット海外遠征勲章」を創設。世界中のあらゆる形態のテロリズムと闘う為の作戦に参加した証
5.    大統領指示 ⇒ 正式名称は「秘密活動のための通達の覚書」で、国家安全保障法により大統領の文書による説明責任を規定
6.    統合特殊作戦軍(JSOC) ⇒ 80年に人質救助部隊として発足したが、9.11後は秘密攻撃部隊に変身、対テロ部隊の訓練も行う
7.    国家情報長官府 ⇒ 国家情報長官は閣僚級の地位。16の政府情報機関を調整し、大統領と国家安全保障会議に助言を与える
8.    国家偵察局(NRO) ⇒ 61年国防総省とCIAが共同で設立するも92年に機密解除されるまでは秘密の存在。偵察衛星の維持が主業務で、実際の作業は民間軍需企業
9.    連邦調査部 ⇒ 人事管理室の一部。連邦機関職員(主に国防総省)の身上調査

資料・出典
以下3種の情報のデータベースの作成
   トップシークレットの仕事を行っていた政府組織の名前、仕事のタイプ
   同じく民間企業名、発注した政府組織、仕事のタイプ
   トップシークレットの仕事が行われていた場所、当事者、仕事のタイプ
ソースは以下の4
   企業に対してトップシークレット・レベルの仕事をするよう指定したおよそ3000件の政府の契約書と発注書。それらを発注した政府組織名、受注した企業名、仕事のタイプ
   民間企業が発表した、トップシークレットを扱う資格が必要なおよそ38千県の求人。その企業名、その求人が関係する仕事をその企業に発注した政府組織、仕事のタイプ
   1200の政府組織が出したトップシークレットを扱う資格が必要な12.7千件の求人とそれぞれの仕事の内容
   求人に応募してきたトップシークレットの仕事をした経験があると書かれた約1500件の履歴書
以上を基にウェブサイト立ち上げ
http://projects.washingtonpost.com/top-secret-america
700以上の政府組織と1900社以上の民間企業がかかわる64万の分野を含むデータベース

訳者あとがき
アメリカ政府のやり方を批判しているが、反米的な立場ではない
なぜ対テロ作戦や国土安全保障のこととなるとみな機密にされてしまうのか、果たして機密はどれほど国を守っているのか、国益のために機密にしなければならないことはもちろんあるにしても、そうでないことまで機密にされているのではないか、安全保障が金儲けの手段になっているのではないか、などのことをジャーナリストの目で捉えたもの
腐敗の追求であり、政府は国民から見えないところに隠れて国民の税金を使って何をしているのか、を暴く
9.11後に天文学的な額の金が注ぎ込まれたことについては、あれは財政出動だったとも言われる。実際の戦力は冷戦時代よりも縮小しているにもかかわらず、国防予算の上昇がコントロール不能に陥ったのは、後方部隊に金がかかり過ぎること
腐敗や権力の暴走に対し、アメリカにはまだ保守にもリベラルにも良識派が根強く存在する。ジャーナリズムも同様に、主要新聞は1つのテーマに関して賛成・反対両派の主張を載せる態度を維持
そういう意味で日本の民度は、中国よりずっと高いがアメリカよりはだいぶ下


トップシークレット・アメリカ最高機密に覆われる国家 []デイナ・プリースト&ウィリアム・アーキン
[評者]渡辺靖(慶応大学教授・文化人類学)  [掲載]朝日 20131201   [ジャンル]政治 
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多すぎる機密がむしばむ民主制
 9・11以降、米国では国家安全保障の最高機密(トップシークレット)を扱う政府機関や企業が倍々ゲームのように増殖している。ピュリツァー賞を2度受賞した辣腕(らつわん)記者と、ベテラン軍事アナリストがタッグを組み、その実態に切り込んだのが本書だ。
 数百人の関係者への取材、百カ所以上の施設への視察、数十万件の文書や記録の収集など、2年半に及ぶ徹底した取材に舌を巻く。巷(ちまた)に溢(あふ)れる即席の扇情ルポとは明らかに次元を異にする。
 カーナビを遮断する「地図に出ていないアメリカ」の急増。軍産インテリジェンス複合体が集積する富裕地域の誕生。米国上空を飛行する無人機の増加。強まる全米各地の礼拝所への監視。CIAによる指名殺害の内幕……。「秘密への強迫観念的な依存」を深める現実が次々と活写され「ワシントン・ポスト」紙での連載時に掲載を見送られた情報も数多く開示されている。
 機密の緩和・解除は容易ではない。政治家にとって大きなリスクになるからだ。むしろ「念のため」という判断がさらなる機密を生み出す。自らの不正行為を隠すために機密指定されるケースも珍しくないという。
 テロリズムの最大の目的が恐怖心や不安感によって相手を萎縮させることにあるならば、実は、米社会は「テロとの戦い」に着実に敗北しつつあるのではないか。
 「あまりにたくさんの情報が機密にされたために、そうすることで守ろうとしたシステムをかえって動けなくしてしまっている」と著者は米民主制の行く末を案じる。
 それはもはや大統領個人の人格や力量を超えた、制度的な宿痾(しゅくあ)にすら思えてくる。ネットワーク化が進む今日、日本の未来予想図ではないとは言い切れない。
 ジャーナリズムの本道が、姑息(こそく)な世論誘導ではなく、調査報道に基づく権力監視にあることを再認識させてくれる出色の現代米国論だ。
    
 玉置悟訳、草思社・2730円/Dana Priest ジャーナリスト。William M. Arkin 元アメリカ陸軍情報局分析官。

『トップシークレット・アメリカ 最高機密に覆われる国家』
著者:デイナ・プリースト ウィリアム・アーキン 訳者:玉置 悟 草思社
弁護士 梓澤和幸
  ワシントン・ポスト記者のデイナ・プリーストと元米陸軍情報局の分析者でフリージャーナリストのウィリアム・アーキンが、 最高機密に覆われる国家、アメリカの対テロ戦争に関わるインテリジェンス活動の具体的態様を調査報道によって明らかにした。

  9.11アメリカ本土中枢部へのテロ以降、アメリカ政府は文字通り世界中の国々と、アメリカ国内の、首脳を含む政治家、一般市民、 テロリストと疑う人物を対象として、電話、メール、ツイッター、フェイスブックを監視し、通話内容、情報を探索、集積している。
  このため、巨大ビル、地下シェルター、巨大通信傍受施設などのハードウェアを構築し、 一方では最高機密を扱う有資格者を854000人(うち民間人265000人)の人員を確保し、 施設と人員の力で世界のかなりの人々に関する個人情報データベースを集積している。 ワシントン周辺には情報関連のビルが33ヶ所もでき、総面積はペンタゴンビルの3つ分にもなる。

  本書がアメリカの陰の首都と呼ぶボルティモア付近のエリアには、NSA本部(国家安全保障局)がある。 そこには推定3万人の職員が働く。今後の10年に1万人が増やされる。NSAは1日に17億件(1日にである!  本書106ページ)にのぼる電話会話、携帯メール、Eメール、ツイッター、ネット掲示板、ウェブサイト、コンピュータネットワーク等、 あらゆる通信を傍受し、IPアドレスを割り出す。

  二人のジャーナリストは、丹念なネット上の情報の追求と現地調査及びヒアリング取材によって、 こうした膨大な個人情報収集にあたる組織とシステムの具体的態様を突き止めた。 膨大なインテリジェンス産軍複合体が政府から無尽蔵な金を引き出し、巨大なビジネスを作り上げていることを明らかにした。

  無人機によるリンチ処刑
  本書のクライマックスは、無人機を用いたテロ容疑者の指名殺害の叙述である。
  アメリカ政府所有の無人機は、この10年に68機から6000機に増えた。

  無人機によるターゲットの殺害について、アメリカ政府は対テロ戦争の一手段とするのかもしれない。 しかしそれは、裁判によらない死刑判決とリンチともいうべき処刑を思わせる。テロ容疑者の個人情報、動静情報を追跡した上で、 無人機による暗殺決定を数多く起案したロースクール出身のCIAの元法務官への取材も実名入りでレポート。 間違いはないかを恐れたその内面にも踏み込んだ。著者の一人アーキンは、殺害をコントロールする司令室の内部にまで招かれた。 映像でターゲットを追跡し、ついにその居宅に無人機による爆弾投下と機銃掃射を行う場面に出会った。 オバマ大統領がオサマ・ビン・ラディン殺害をライブでウオッチする場面がテレビで放映されたことは記憶に新しいが、 こういう方法による処刑は少なくない。CIAの公式発表では、1400人の武装勢力容疑者を殺害したといい、民間人の巻き添えはおよそ30人とした。 しかし、民間のNGO 「戦闘モニターセンター」 によれば、2006年からの5年間で2052人が犠牲になり、 そのほとんどは民間人だった(本書259ページ)。アフガンでテロリストへの攻撃のはずが結婚式会場を誤射し、少なくとも48人が殺された例もあった。

  アメリカという世界帝国の安全を守るために、アジアとアフリカ、中東の民が日々の幸せと命を差し出される。 帝国のど真ん中に立つインテリジェントビル群と、854000人のインテリジェンス要員の群像の描写は、ここに呑み込まれ、 小さな相似形を描くことになるかもしれない日本の未来を写し出すようだ。表紙裏のコピーには、「やがて日本もこうなるのか」 とある。

  本書はテロリズム対策を犯罪の予防や捜査ではなく、「戦争」 と規定したアメリカのゆがみを事実の裏づけで描いた。アメリカ合衆国憲法はいずこに!

  衆議院を強行採決で通過した秘密保護法は、対外戦争に道を開く一歩だ。同時にそれは人々に知られない暗黒の社会空間を作り出し、 トップシークレットがアメリカを醜く変貌させたように、日本をしてスマートな闇に包まれたニュールックスの軍事国家に変貌させる一歩なのではないか。
  実践への意欲とともに、深い思索をも呼び起こす好著だと思った。憂慮する市民と一線の記者、制作者に緊急のご一読をすすめたい。
(憲法メディアフォーラム 201311月に掲載)

エコニュース

【書評】トップシークレット・アメリカ〜「機密指定」を隠れ蓑にした防衛族の利権あさり

9.11後のアメリカで莫大に増加した防衛機密とその副作用を描いた本。いま日本でわたしたちが注目すべきは、防衛予算の歯止めの利かない増大と、その監査が困難になっているという部分です。すさまじく利潤率の高い仕事になっているそうで、その理由は「機密」であるために議会の財政監査が困難な点。

日本でも「秘密保全法」が制定されることになりましたが、アメリカと同様に機密指定を理由に財政監査ができなくなるおそれというのは今後に心配していくべき点だと思います。(いまの自民党で、重役にある人は石破幹事長を初めとしてタカ派と防衛族が多い様に感じますが、偶然でしょうか。不人気な秘密保全法をがんばって成立させた背景に建前の「国防」やよくいわれる「隠蔽」ではなく「利権」も考えてみるべきです(「軍靴の足音」の危険ばかり言っているのは思考停止ですよね。福島の教訓の一つに「秘密主義と結びついた利権」があったとおもいます)。

また、今年、スノーデン氏の内部告発で明らかになったアメリカのPRISMなどに代表される通信傍受と国民監視の世界的な流れについても、その背景にあるという考え方もあります。これの間接的な論拠の一つとして、日本と同じくアメリカの同盟国であるオーストラリアの警察当局が米国と同水準の電子メール情報収集プログラムの導入を決めたという報道を、論者の方はあげておられます。(12月12日追記)

現在の米国ではたとえば、「極秘」の文書を取り扱える資格を持っている人だけで85万人にもなるらしいです。ちなみにスノーデンさんもそのひとりでした。そしてそれが国家資格の一種として、給料にものすごく反映する様になっているそうです。

共著ですが、著者の一人は元アメリカ陸軍のインテリジェンス士官です。そのために取材が可能になったと思われる部分が多々あります。逆に言うとこの本のような内容は「元・関係者」でない限りなかなか書けない〜とりわけ外国人にとっては困難です。その部分で貴重。

ただ、この本の問題点はソースの出典がない部分。例えば機密指定解除された文書(WEBサイトなどで閲覧可能になっている)であっても、出典が出ていない。これで何が困るかと言うと(1)信頼性が欠けるというのもありますが(2)そのソースを元に自分で別内容を調査したいときに、参考に出来ないからです。

さらに、翻訳版では単語ごとの索引・インデックスがなくなっているせいで余計に使い勝手が悪くなっています。(ここをクリックしてAmazonでお試し読みできる原書と対照してください)

もちろんオフレコの取材源等は明かす必要はないけれど、そうでない部分までソースが付いていないのは致命的に使えないです。

一般に軍事関係の翻訳書では、原書にあった脚注がなくなっていたり、索引が消えたり、あと甚だしい場合には一章丸ごと抜け落ちたりします。原著者との取り決めでそうなるのでしょうか。もちろん、その「抜け落ちている部分」は外国人に使われると嫌な部分やセンシティブな部分だったりするのです。

なので逆に、原書の中で「何が重要か」を知りたいときには敢えて日本語の翻訳版と対照しながら、原書の見出しを参照して日本語版にない部分を探すという裏技があります。

なお、上述のオーストラリアにおけるちなみにこの電子メール情報収集プログラムではディープパケットインスペクション(DPI)が使われるそうですが、この技術の使用は、すでに日本では総務省が2010年時点でアッサリと認めています。しかしネット上での行動履歴を丸裸にして、通信の自由を冒しているんじゃないかという強い批判もある技術です。




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