リテールバンキング今昔物語 海宝明 2014.3.29.
2014.3.29. リテールバンキング今昔物語
著者 海宝明 1977年東大文学部西洋史学科卒。三和銀行入行。ブラッセル支店、ソニー生命経営企画部長、くずは支店長、UFJニコス執行役員を経て、現在川竹エレクトロニクス取締役。青山学院大文学部にて講座「現代社会と文学部」講師。著書『白夢国覚書――ある銀行マンの見たヨーロッパ』
発行日 2012.1.25. 第1刷発行
発行所 金融財政事情研究会
2012.9.3. 海宝君からの手紙
専門商社で元気にやっています。
2冊目の本を出版、何かの折に眺めていただければ幸甚
序に変えて
カバーの写真は、イスラームのある国を旅行した際買った絨毯
隣の地元の男が驚くほどのバーゲンをやった妻の腕は見事だった
第1部 ローンウォーズの時代
第1章
カードローンの歴史始まる。そして変化の胎動
本書は、1970年代後半から約25年に及ぶリテールバンキングの興亡史
銀行の小口消費者ローンの象徴とも言えるカードローンの歴史は、78年に三和銀行が「クローバーカードローン」を発売したことが嚆矢 ⇒ 日経に「都銀”サラ金”開始」と載った
申込人の属性をベースとしたスコアリングで審査
収益性に疑問あり、焦げ付きの問題も附随
第2章
知られざるインターバンクワールド
85年、金利自由化元年に業務開発部に異動
第3章
ローンにしてローンにあらず
カードローンが小口ローンマーケットの代表商品に
バブルとともに借入ニーズが急拡大
代弁の分析を行い、結果を審査基準に活かすが、所詮手作業では限界
第4章
マーケティングの結晶体を目指して
新型総合口座プラスワンに収斂
第5章
人間の行動――その合理性と非合理性
80年代後半、無人ATM店舗戦略展開 ⇒ 利用者の4割が他行の客
第6章
アンシャンレジームの亀裂
88年頃、銀行のカルテル機構がカードローン金利で崩れる
第7章
ダイレクトマーケティングの夢
支店を通じた営業から、広告やDMによる顧客への直接訴えかけ
1回8万通のDMを25回やって、プラスワンの申込件数は12万件(6%のレスポンス率)とまずまずの成果
第8章
未知の世界へ 新規顧客への大規模アプローチ
信用枠を取引履歴に応じて漸増する新型ローンを開発したが、フォローできないままに海外転勤となり、プロジェクトもストップ
第9章
革命にとらわれた人々
銀行におけるクレジットカード業務の苦闘が続く
第10章
消費者金融の視界から見えたもの
貸金業界の経営問題 ⇒ グレーゾーン金利と資金調達
2000年代に入ってメガバンクとの垂直型提携をもたらす
第11章
バブルローンの研究
使途目的の拡大、金額上限の急激な引き上げ、返済方法の緩和・繰り延べ、保証の拡大(実質自己保証からノン・バンク保証へ)、担保掛目の引き上げ
失敗の本質
① レディーメイド商品が、限りなくオーダーメイドに近づいた ⇒ 大数の法則が働かなくなった
② プロパー融資より基準の甘い仕組みを汎用化させた
③ 責任の所在が曖昧に ⇒ 代弁によって責任が他に転化
第2部 銀行とクレジットカード~二重性の葛藤
第12章
フラッシュバックとしての情景
リテールバンキングの重要な柱のもう1つがクレジットカード
銀行が系列会社を通じてスタート ⇒ 80年代に入って一般大衆に拡販、81年国際化
第13章
国際化とは何であったのか
企業価値の向上やアイデンティティの醸成を狙って独自路線を行くJCBとVISAという既存ブランドに乗る路線とでは決定的な違い
キラーコンテンツの観点からは、JCBが東京ディズニーランドのオフィシャルスポンサーの権利を得たことが大きい
日本人の未来への可能性あるいは感性の趣と切っても切り離せない絡まりをもって展開
第14章
フランチャイズ化を巡って~銀行からの視界とは
83年、銀行がカード子会社を設立してフランチャイズに
第15章
デュアルの幻想
88年、VISAとマスターカードの並行発行(デュアル旋風)開始 ⇒ 日本市場でマスターカードの後塵を拝していたVISAがUCカードにVISAの並行発行を許可し、巻き返しを図ったもの。VISAは直前に日信販やセゾンにもライセンシーを認めており、銀行独占はすでに崩れていた
第16章
ミレニアム前夜
プリペイドやデビットといった支払い手段が登場、ミレニアムを前にキャッシュレス決済の転換点が生じつつあった
第17章
新世界の混沌 そして統合という図らざる実験
2000年代の銀行再編により、銀行のカード業務も再編
第18章
会社はだれのものか~カードの固有性
銀行によるカード会社支配の歴史
グレーゾーン金利の撤廃と過払い金返還問題がカード会社の経営を圧迫
終章 「反町プロジェクト」顛末記
仕事に意味を見出すためには何が必要か? ⇒ 仕事自体の意義や必要性、それが生み出す価値あるいは結実としての収益を知ることから始まる
ミリオンカードが無名時代の反町隆史をイメージキャラクターとして起用していたが、人気絶頂の今、銀行のカード販促キャンペーンの表彰式に呼ぶ企画を立てる ⇒ カードの販促に絶大な効果をもたらしたが、本当に狙ったのは日常業務の中に非日常性を見出すこと
Cool head, warm heartこそ、リテール企画の核心
コメント
コメントを投稿