第四権力 スキャンダラス・テレビジョン  高杉良  2013.6.23. 

2013.6.23. 第四権力  スキャンダラス・テレビジョン

著者  高杉良 1939年東京生まれ。化学業界専門紙の記者、編集長を経て、75年『虚構の城』でデビュー。経済小説がおおい。企業組織の不条理と戦うミドルの姿を描いた作品は日本中のビジネスマンから絶大な支持を得る

発行日           2013.5.15.
発行所           講談社
初出 『週刊現代』2012.2.18.13.1.5.
新聞広告で興味

第1章        怪文書の
85年東日新聞系列のテレビ東日にコネ入社(全員)45歳独身・藤井靖夫。報道局の現場から経営企画部副部長待遇に異動
プロパーのトップ瀬島専務を巡る怪文書が出回り、週刊誌沙汰に
藤井は、女性広報局長と共に、プロパーのトップとしてクリーンな木戸常務擁立に動く

第2章        伝説のテレビ屋たち
ニュースステーション誕生のいきさつ

第3章        活字コンプレックス
NHKビルの中に放送記者会があるが、民放テレビ局は除外
テレビ会社社員には、新聞社に対する活字コンプレックスがある

第4章        トップ人事
社長定年制を自ら作って自ら破った現社長が取締役相談役になり、大方の予想を裏切って本社専務がいきなり社長に天下り、待望のプロパー社長の誕生は見送り ⇒ 2年で会長に退任し後はプロパーにするとの含み
東日新聞の筆頭株主の社主・老女が、瀬島専務のプロパー社長昇格に反対
クリーンな木戸常務に代表権を持たせて瀬島と競わせることに成功

第5章        民報のNHK(BSTTBS)”
新聞・テレビの検証能力が低下

第6章        中期経営改革
広報局長のアドバイスで藤井がまとめた改革案を、瀬島が横取り

第7章        特命事項
社主の持ち株の一部を東日テレビが肩代わりする話が持ち上がる
社主は、代わりにテレビの株主になる

第8章        人事異動
藤井が経営企画部長に昇進

第9章        人事権者の暴走
2年後、瀬島社長、木戸副社長が実現
瀬島の人事権濫用を契機に、木戸は辞任、女性広報局長も辞任



リアリティー十分な内幕物
 書店に行くと「経営(学)」の本があふれている。「戦略」や「イノベーション」あるいは「ダイバーシティ」と多彩。しかし経営の実際は、本書で描かれているような人間模様によって行われていることが多いものだ。
 経済小説の第一人者がテレビ局の内幕を描いた本である。株主(新聞社)とのトップ人事の暗闘。人気番組誕生の裏側。美しい局アナと幹部のセクハラ。ゴマスリ。下請け(プロダクション)いじめ。小説でなければ書けないストーリーが満載されている。
 副題に「スキャンダラス・テレビジョン」とあるが、読者は本書のさまざまなエピソードを読みながら、きっと自分の職場を重ねてイメージするに違いない。著者の巧(うま)さはリアリティーにある。例えば部下の手柄を横取りする上司。自分の上昇志向のために、あらゆる汚い手をつかい、恥じない人物など、読者は「いるいる。これはわが社の誰某がモデルではないのか」と思いたくなる描写満載だ。
 主人公はコネ採用の45歳の経営企画部の中堅幹部で独身。中長期の方針を立案、次世代トップの人事を見ながら、恋と職場人生を悩む日々を送っている。悩むのは尊敬する人物が身ぎれいで、権力志向がないからでもある。
高杉良ほど「悪人」を描くのが上手な作家はいないと評者はつねづね思っているが、本書もまたそうである。「社長という一枚しかない座布団」を目指す人物の迫力は凄(すさ)まじい。しかしこれが現実なのだ。
 またこの著者の巧みさは、本筋とサイドストーリーとの絶妙な組み合わせにある。現実に存在する小料理屋や「豪華弁当」の食事風景。そしてワインなど、おいしいものを食べるシーンをふんだんに織り込みながら、テンポのよい「会話」で小説は展開される。同僚のトラバーユに悩みを深める主人公。羨ましい恋愛などを含め、読者はたくさんのエピソードにドキドキしながらページをめくるに違いない。
 それにしても、と本書を読んで評者が思ったのは、職場恋愛の高齢化である。いや近年はいつまでもみな若いということか。(講談社・1575円)
 評・中沢孝夫(福井県立大学 地域経済研究所長)

テレビ朝日をモデルにした高杉良の新作。親会社である朝日新聞社出身の社長が続く中、テレビ朝日のプロパー社長が誕生する前後の裏事情を、主人公のミドル社員藤井と、その恋人である元アナウンサーの広報局長堤の視点から描く。特に主人公である藤井が話の中心になって活躍、暗躍する訳でもなく、ダーティなイメージが定着している瀬島(後の社長)と、クリーンな木戸(後の副社長)のどちらが初のプロパー社長に相応しいのかを基本路線に物語が淡々と進む。そのため、あまり感情移入ができず、気持ちが盛り上らなかったというのが正直な感想。


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