通貨戦争 最悪のシナリオが動き出した!  James Rickards  2013.4.7.


2013.4.7. 通貨戦争 最悪のシナリオが動き出した!
Currency Wars – The Making of the Next Global Crisis           2012

著者 James Rickards 資本市場で30年を超える実務経験を持つ投資銀行家。リスク管理の専門家。国防総省やアメリカの諜報コミュニティ、大手ヘッジファンドなどにグローバル金融について助言しており、国防総省が実施した初の金融戦争シミュレーション・ゲームの推進役を務めた

訳者 藤井清美 京大文卒。翻訳家

発行日           2012.9.30. 第1刷発行
発行所           朝日新聞出版

拡大する通貨戦争が世界経済を崩壊させようとしている。このままいけば、為替市場で始まった新しい危機が瞬く間に株式や債券、商品市場に波及し、パニックは世界中に広がるだろう。机上の空論ではない。同じことがかつて起きているのである。紙券通貨が崩壊して、資産の凍結、金の接収、資本規制という措置が取られたことは過去に何度もある。ドルは崩壊するのか。IMFSDRが解決策となるのか。金本位制に復帰するのか。大混乱に陥り、悲惨な事態が続くのか。国防総省が実施した初の金融戦争シミュレーションの推進役を務めたリスク管理の専門家が、精緻なシナリオを描く!

序文
1971.8.15. ニクソン大統領が新経済政策発表 ⇒ 価格統制と、輸入課徴金、ドルと金の交換停止
今日、新たな通貨戦争の渦中にあり、ドルに対する信認の危機が再び訪れようとしてる
2007年以降、FRBは短期金利を下げ、市中銀行に無制限に融資することで経済の崩壊を防ぐ ⇒ 金利はゼロになり、FRBは弾薬を使い果たしたかに見えた
08年 FRBは量的緩和という新しい弾薬を見つける ⇒ 大暴落後の自然なデフレを中和するため、資産価格や消費者物価を吊り上げようとしている
未曽有の規模でマネーを増刷することで、FRBは最善の展開を期待して最悪の事態に対する備えは全くしていない
FRBのマネー増刷が突然ハイパー・インフレに変わる危険性は極めて現実味のあるもの
ドルの増刷は、アメリカの債務の実質的価値が低下し、ドルの価値の低下は、途上国の輸出品の価格がアメリカ人にとってたかくなるため途上国の失業率の上昇に繋がる。その結果生じるインフレも、途上国が必要とする原材料の価格を上昇させる
通貨戦争は、20世紀だけで2度起きており、必ず悲惨な形で終わる
最大の脅威は、ドルそのものの崩壊。アメリカの比類なき軍事的優位は、ドルが等しく比類ない支配的役割を果たし続けることによってのみ維持できる

第1章        戦争の前
応用物理研究所APL ⇒ 1942年兵器改良を目的に設立、アメリカの極秘ハイテク兵器研究施設体系の要として、ペンタゴンと連携しながら、主として先進兵器や宇宙探査の研究を行う。最初の任務が戦艦を空襲から守る対空用近接信管(VT信管)の開発。VT信管と原子爆弾、レーダーは第2次大戦でアメリカの勝利に貢献した3大技術(『永遠の0』で間宮が特攻で突っ込む際の描写に登場)
アメリカの圧倒的な軍事的優位に対抗して、非通常型の戦争を行う能力が高められ、サイバー攻撃、生物・化学兵器、他の大量破壊兵器等の開発が進む中、金融兵器の活用も検討 ⇒ 09年のペンタゴンによる金融戦争シミュレーション・ゲームはこれらの動きに対する初の試みであり、APLも巻き込んだもの
マーケット・インテリジェンス(MARKINT) ⇒ 資本市場を分析して、市場参加者の意図について、意思決定に利用できる情報を見つけようとするもので、この手法を安全保障の分野に応用して、テロ計画を事前に突き止めたり、米ドルに対する攻撃の予兆を見つけたりする方法を開発しようとした

第2章        金融戦争
ロシアの挑発 ⇒ 石油や天然ガスの代金を、金にリンクした新通貨で支払わせる
北朝鮮の経済的な崩壊 ⇒ 人道的支援はするが、世界経済上はほとんど影響なし
台湾で独立派の総統が誕生し、中国本土との経済統合拡大の流れを反転させる動きが出てきた
精巧なドル偽札の出現

09年以降、株式と金はどちらも85%以上値上がり ⇒ 1933年に全く同じ現象が起きている。アメリカはポンドに対するドル・レートを切り下げたために相対的に金・株が値上がりしただけで、今回も同じく米ドルの価値低下によるもの
1970年代の通貨切り下げも、瞬く間に現代史上最悪のインフレに繋がった

第3章        黄金時代について
自国通貨を切り下げて競争力を高めようとする通貨戦争は、国際経済の最も破壊的で恐ろしい展開であり、大恐慌の悪夢を彷彿とさせる
保護主義はもっと露骨な手段
20世紀の通貨戦争に先立つ事象として顕著なのは以下の3
l  18701914年の古典的金本位制 ⇒ インフレがほとんどなかった。通信・輸送分野の技術進歩によって、商業・金融活動がグローバル化したが、その背後にあったのが金。主要国が金本位制を採択し、安定した交換レートに基づいて国際貿易は史上最高の伸びを記録
l  190713年の連邦準備制度の構想 ⇒ 07年銅鉱山会社の株買い占め事件を契機として、買占めに失敗したニューヨークの銀行の取り付け騒ぎに発展。06年シスコの地震による莫大な損失の後だったこともあって、市場が神経質になって起きたパニックだが、アメリカ経済への全面的な信頼失墜の始まりであり、モルガンが中心となって銀行家たちの協力を取り付け、危機を脱出 ⇒ 政府設立の中央銀行の必要性が痛感され、13年のFRB誕生へと繋がる
l  191419年の第1次大戦とベルサイユ条約 ⇒ 英仏とも戦費調達のための借入返済をドイツからの賠償で賄おうとするも、ドイツは過酷な義務を履行するべくもなく、ロシアも革命によって借金は棒引き、賠償額の算定すら基準を巡って連合国間の意見がまとまらず、賠償金問題は以後15年に渡り国際金融システムにとってお荷物となる
1次世界大戦によって、互いに絡まり合った返済不可能な巨額の政府債務という新しい要素が持ち込まれ、それが資本移動の正常化と戦後の通貨制度の枠組みを決めるに当たって克服不可能な障碍となった

第4章        1次通貨戦争(192136)
1921年 ドイツのハイパーインフレで始まる ⇒ 当初は競争力を高めるためだったが、後には制御不可能となり、経済が破綻寸前に
次いで25年にフランスが金本位制に復帰する前にフランを切り下げ、戦前のレートで金本位制に復帰した米英に対して輸出優位を得る
イギリスは31年に金本位から離脱、対仏劣勢を挽回
31年にフーバー大統領の提案によりドイツの賠償支払いを1年猶予 ⇒ 恒久的なものとなりドイツにとっての追い風になり、ヒトラーは世界貿易から撤退して経済の自立性を高める
アメリカも33年には金に対する通貨の価値を切り下げて、対英優位を奪回 ⇒ 英仏が再切り下げで対抗
36年にはフランスも遅まきながら金本位から離脱

ドイツでは、財政支出を賄うために大量に発行した国債を中央銀行が引き受けたために、通貨価値が破壊的に下落。賠償金は金や輸出の一定割合に固定されていたため負担を減らすことは出来なかったが、国内では実物資産の価格暴騰と債務の実質価値の急減で潤った人は良かったが、銀行預金は無価値となり、物価は急上昇、最も打撃を受けたのは中産階級の年金生活者
2324年 農業用地や工業用資産担保の新通貨発行により、漸くインフレ阻止の努力が始まる
ハイパーインフレが、債権者と債務者、資本家と労働者の社会的・経済的関係を一変させるために政治的に利用できることが証明された ⇒ インフレ後の2429年の間、ドイツの工業生産は、どの主要国経済よりもハイペースで拡大

22年 ジェノバ会議で主要国の間で金本位制への復帰が検討され、新たに「金為替本位制」誕生 ⇒ 準備資産に特定の外国為替持ち高を算入。アメリカが1オンス=$20.67に固定、他の国々はドルを準備資産に組み入れられるようになる。最大の欠陥は、貿易黒字国が大量の外貨を蓄積し、突然赤字国に金との交換を要求することから生じる不安定さ
23年 仏フラン暴落

戦費調達のための紙幣増発による通貨流通量の増大に対し、金供給量はほとんど増えない中、戦後の紙幣と金の交換比率を戦前の金平価と一致させようとしたことが戦後の大きなジレンマをもたらした ⇒ 選択肢としては、通貨流通量を減らしてデフレにするか、通貨を恒久的に切り下げることのいずれかであり、独仏は通貨切り下げを、英は通貨流通量の圧縮を選択したが、チャーチルの国の威信をかけた選択も、深刻なデフレを招き、後に本人も人生最大の失策と認める
金融システムの観点から、最も危険な局面は1931年前半の世界的な銀行取り付け騒ぎ ⇒ 各国で銀行が閉鎖され、大量の金流出に見舞われたイギリスは金本位から離脱(英ポンドはドルに対して数か月で30%下落)、次いでアメリカにパニックが波及、緊急銀行法の制定によりFRBが加盟銀行に無制限で貸し付けをすることで危機を回避するとともに、国家緊急事態法に基づく大統領令で金の民間保有を禁止・接収、金鉱山の国有化。国民が政府を信頼していなければできない施策。その上で1オンス=$35にドル平価を切り下げるとともに、一般の契約における金価格スライド条項を無効(77年廃止)とした。金接収による利益を原資として財務省は為替安定化基金を設立、60年後の94年に暴落したメキシコ・ペソから市場の安定を取り戻すために活用されることになる
1936年 三国通貨協定 ⇒ 英米仏間の非公式協定。フランス・フランの若干の切り下げを認め、3国間で為替レートの安定を合意、ただし、政治的配慮から国内の成長のために例外を設けたところから形式的な合意に過ぎなかったものの、通貨戦争の休戦を告げる役割をしたことは間違いない

第5章        2次通貨戦争(196787)
1944.7. ブレトンウッズ体制確立 ⇒ 1オンス=$35を前提とした米国主導の固定相場制により、繁栄を取り戻したが、第2次通貨戦争の萌芽は、1967年のジョンソンの地滑り的勝利と「銃とバター」の両立を謳った政策綱領にあった。銃はベトナム戦争であり、バターとは貧困との戦いなど「偉大な社会」実現のための社会福祉政策であり、両施策による膨大な財政支出により、アメリカはたっぷり蓄積していた国内では経済力を、海外では政治的信用を徐々に失い始める
その後20年にわたって制御不可能な高率のインフレが進む ⇒ 物価上昇というよりドルの暴落で、特に77年からの5年間でドルの価値は半減
きっかけは64年から始まった英ポンド危機 ⇒ 貿易収支の大幅赤字と国内のインフレ昂進が原因。6714.3%切り下げで対応。ブレトンウッズ体制下初の主要国通貨切り下げであり、体制にひび割れの兆し
65年 ド・ゴールが、ドルの国際通貨制度の中心通貨としての役割の終焉を宣言し、ドル建て準備金の金への兌換を実行、スペインも追随し米国から大量の金準備が流出
68年金の二重価格制(市場価格は別建てとした)69SDR創出
71.8.15. ニクソンの「新経済政策」 ⇒ 賃金・物価統制の導入、10%の輸入課徴金、金交換停止(=ドルの金平価の切り下げ)。力を背景にした強硬手段であり、主要通貨に対ドル切り上げを迫る
71.12. スミソニアン体制 ⇒ ドルの対金約9%切り下げ、英仏を除く主要通貨の対ドル切り上げ、上下各2.25%の幅の変動制への移行したが、「通貨を減価させることで繁栄への道を歩むことはできあに」という教訓はこの時も貫かれ、2年もしないうちにアメリカは戦後最悪の景気後退に陥る
73年 変動相場制の導入
新たな通貨収斂を目指す努力は、93年のEU発足と99年の統一通貨ユーロの導入で完結
アメリカは、3度の景気後退に見舞われ、金の年間平均価格は71年の1オンス=$40.80から80年には$612.56に急騰 ⇒ 不況下の物価高でスタグフレーションと言われた
80年代初め、ボルカーの金融引き締め策とレーガンの減税政策が実って強いドルが復活したが、失業率は高止まりし貿易赤字は止まらず、85年のプラザ合意によりドルの実質切り下げに走ったため、逆にインフレを生み出す
87年 ルーブル合意 ⇒ プラザ合意の行き過ぎを修正するためのG7合意
アメリカ経済の成長とFRBの安定した金融政策を信頼して依存するシステムであり、92年のポンド危機、94年のメキシコ・ペソ危機、9798年のアジアとロシアの金融危機など、いずれもドル以外の危機で、ドルは概して安全な逃避先とされた

第6章        3次通貨戦争(2010)
07年の不動産バブル崩壊による不況の影響
中国とアメリカ、人民元とドルの争いは、グローバル金融の最大の関心事
当初人民元は、輸入促進のため過大評価(83:$1=2.8)されたが、その後の10年間で6回の切り下げ($1=5.32)、さらに94$1=8.7元としたため、アメリカは中国を「為替操作国」と認定、97$1=8.28元でドル・ペッグとなり04年まで安定
中国から輸出される低賃金をベースとしたデフレに対抗するため、FRB0211年一貫して低金利政策と公開市場での国債買い取りを伴う幅広い減税政策を実行
中国は、ドル・ペッグを維持した結果累積する対米貿易黒字を米国債保有という形で外貨準備を増大させたが、アメリカからの強い要請で、6年かけて$1=6.40元まで切り上げ
大西洋戦線 ⇒ ドルとユーロは相互依存の関係
ユーロは現代の通貨創造の軌跡。51年の欧州石炭鉄鋼共同体ECSCが嚆矢、92年のマーストリヒト条約により政治的な統一体EUとなり、99年ユーロ創設
通貨戦争の周縁的戦闘のうち最も突出しているのがブラジル ⇒ 93年まではドル・ペッグ。94年のペソ危機の際、新通貨レアルを導入し約30%切り下げ。97年のアジア通貨危機の飛び火でIMFの支援を受け完全変動相場制に移行、0210年天然資源輸出能力を大幅に拡大して技術・工業基盤を強化したが、レアルが対ドル40%上昇、結果的にアメリカからインフレを移入したことになり、G20に支援を依存せざるを得ない状況に

第7章        G20による解決への動き
グローバルな問題解決の手段()として、各国にとって都合がよく、重要性を増している
08年のリーマン・ショック以降首脳会合が加わり、世界の有力なリーダーの会合へと発展
アメリカは、量的緩和によって通貨戦争の勝者に浮上。通貨供給量を増やして資産価格を押し上げるとともに、ドルの価値を下げる
11.3.11.東北大震災と原発事故の際、通貨戦争の新たな戦線が浮上 ⇒ 復興資金の円回帰により円の対ドル相場が急騰、史上最高値を更新。当面はアメリカのドル安政策は日本の復興のための円安の必要性に優先順位を譲るべきで、主要国中央銀行の協調介入だけがその力を発揮するはず

第8章        グローバル化と国家資本――世界経済が直面している重大な危険
通貨戦争は、貿易相手国を犠牲にして自国のコストを引き下げ、輸出を拡大し、雇用を創出して、経済を浮揚させようとする国々による、通貨切り下げ競争を伴う
ライバルに経済的打撃を与えるために、通貨戦争が本当に武器として使われるシナリオもあるし、打撃を与えると脅しをかけるだけで、地政学的な戦場でライバルから譲歩を引き出すことも可能
l  グローバル化の勝利 ⇒ グローバル化が広く認識されるのはベルリンの壁が崩壊した後の90年代。金融の規模と相互の繋がりをかつてないレベルに拡大
l  国家資本主義の台頭 ⇒ ドバイ、モスクワ、北京等金融のホット・スポットでは、次に何が起きるか予測は極めて困難
l  継続的なテロの脅威

第9章        経済学の誤用
1940年代の終りに、経済学は政治学、哲学、方角といったかつての同類と別れて、応用数学や物理学などの自然科学と連携しようとし、因果律を基本原理とする古典物理学と手を結ぶ。さらに69年からはノーベル賞に経済学賞が加わり、経済学の学問的変容を促進
にも拘らず、08年のパニックでは、主要なマクロ経済学者や政策策定者、リスク管理者のほとんどが金融システムの崩壊を予見できなかったし、崩壊を止める手立てを打ち出すこともできなかった

第10章     通貨、資本、複雑性
ケインズ経済学の乗数効果とマネタリズムの通貨に対する量的アプローチは、理論的にも実世界での効用の点でもどちらにも欠陥があるが、それでも景気の低迷期にはこれらの理論が未だに公共政策の中の中心的パラダイムとして使われている ⇒ 膨張した政府債務は、インフレと通貨価値の低下という助けがなければ到底返済できない

第11章     終局――紙券か金か、それとも混沌か
ドルの弱さと新たな通貨戦争が国際通貨制度の安全に及ぼすリスクは十分認識されているが、ドルの先行きについて4つの結末の予想 ⇒ 混乱の可能性の小さい順に列挙
1.    複数の準備通貨の主張 ⇒ ドルの支配的地位が崩れる転換点がどこかは不明。かつては金融システムのアンカーとして金が作用したが、ドルが他通貨に代わるということは単独のアンカーが無くなるということで、準備通貨が固定されずにふらふら動く世界であり、市場は今よりもっと変動しやすく不安定となろう
2.    SDR ⇒ 69年にIMFが創設・管理する世界通貨で、何の裏付けも持たず随時発行できる。量的規制がないことと、バスケットの中身を変更できる点で有効
08年のパニックの際、G20が指揮して巨額のSDRを発行して世界の流動性不足をカバー。同時にIMFは自身のSDR借入枠を拡大し、最後の貸し手としての機能も充実
特定の国の通貨を基軸通貨とする国際通貨体制では、流動性の供給と基軸通貨に対する信認の維持を両立させることはできない、というジレンマも解決される
IMFの議決権の過半を保有するアメリカの出方次第という所もある
3.    金本位制への復帰 ⇒ これを唱えることは、マネーサプライを「柔軟に拡大できる」現代の制度の利点を理解していない頭の悪い人間の印とされる
建設的な役割を果たそうとすれば、マネーサプライに対する金の比率を決める必要があり、また非常事態においてどこまでの逸脱を認めるかも決めておく必要
4.    混沌 ⇒ 投資家の信頼が無秩序かつ破壊的な形で崩壊する可能性が極めて高い

むすび
ドルが歩んでいる道筋は持続不可能で持ちこたえられないだろう
11章の4つの選択肢のうち、準備通貨が複数になる可能性が最も高いように思われるが、そうなっても財政赤字や累積債務の問題は何1つ解決されず、問題が国から国へとたらいまわしにされるだけ
破滅から救う道は、規模を縮小し、分割し、単純化すること ⇒ 資本市場や為替市場について言えば、巨大銀行を分割し、その活動を預金や決済等の少数の有益なサービスに限定すること。デリバティブも禁止。柔軟な金本位制を採用してインフレや金利・為替レートの不確実性を縮小すれば、企業はより投資がしやすくなる



通貨戦争 ジェームズ・リカーズ著 世界経済の動きを生き生きと語る 
日本経済新聞朝刊 2012/10/21
フォームの始まり
フォームの終わり
フォームの始まり
フォームの終わり
 国際的な通貨体制あるいは各国の為替相場政策はどうあるべきか。これは19世紀半ばに金本位制が確立されて以来、各国政府を悩ませてきた問題である。各国とも景気後退に見舞われた際、輸出振興を通じた景気刺激を図るべく自国通貨の為替相場の下落誘導に走りがちだ。
(藤井清美訳、朝日新聞出版・2000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
(藤井清美訳、朝日新聞出版・2000円 書籍の価格は税抜きで表記しています)
 その一方で、通貨切り下げ競争の行き着く世界については、ほとんど議論されていない。これは不思議な事態である。本書は、こうした問題意識に基づき、通貨切り下げ競争の帰結を議論することを狙いとする。実際、冒頭では頭の体操として通貨戦争のシミュレーションが展開される。そうした経緯もあって、人騒がせな書名がついている。しかし、論理的な書籍であり、結論も非常に興味深い。
 次いで、通貨切り下げ競争を軸として、19世紀後半以降の世界経済の動きが臨場感あふれるかたちで語られる。とくに第1次世界大戦後、米国が自国に金が集中するなかで金平価切り下げを目指して実施した施策についての説明は秀逸といえよう。現在はドルとユーロ、人民元をめぐる第3次通貨戦争の渦中にあるとされる。第1ラウンドはマネーを増刷した米国が勝利した。しかし、ポイント差の勝利であり、最終的な決着は第2ラウンド以降に持ち越され、間もなくそのゴングが鳴るとされる。
 本書の核心は、その第2ラウンド以降の議論にある。ドルに代えて新たな通貨を国際通貨にするという合意が形成されると、ごく小さなドルの受け取り拒否がドルの価値を瞬く間に暴落させる。これを契機に金融システムは一挙に崩壊し、世界経済は大混乱に陥るとされる。しかし、防止する手立てはある。
 ドル暴落の根源的な原因は、通貨切り下げのための金融緩和が異常なマネーゲームを誘発するところにある。それゆえ、巨大銀行の分割、銀行による自己勘定取引の禁止等を通じて、金融の暴走を抑えるべきだとされる。それはまた、金融政策、為替相場政策と金融制度とは密接に関連しており、それらを一体として捉えて議論することの重要性を示唆している。一読をお勧めしたい。
(同志社大学教授 鹿野嘉昭)


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