グーグル ネット覇者の真実  Steven Levy  2012.8.7.

2012.8.7. グーグル ネット覇者の真実 ~追われる立場から追う立場へ
In The Plex() How Google Thinks, Works, and Shapes Our Lives  2011

著者  Steven Levy ITジャーナリスト。30年以上にわたって多数のIT企業を取材。19952008年ニューズウィーク誌のテクノロジー記者。現在はWired誌シニア・ライター。「ハッカー倫理」を世に知らしめた『ハッカーズ』はあまりに有名。
本書のためにグーグル社内への密着取材を許され、これまでブラックボックスだった検索や広告のシステムを解き明かした

訳者 
仲達志           1954年東京生まれ。ニューズウィーク日本版の創刊プロジェクトに編集者として参加。副編集長を務めた後、マイクロソフトのポータルサイト「MSN」でウェブマガジンの創設などに携わる。マネージング・ディレクターを経て現在フリー
池村千秋        翻訳者

発行日           2011.12.30. 初版発行
発行所           阪急コミュニケーションズ

2007年夏、グーグルの若いアソシエイト・プロダクト・マネジャー18人との外国視察旅行に同伴した時の体験を通じて、グーグルの人々がどのように物を考え、行動しているのか、何を重んじ、どのように世界を見ているのかを知って、「内側の視点」から本を書こうとした
採りあげようとしたテーマの1つがグーグルの国外事業 ⇒ 収益の半分以上をアメリカ国外で得ている
日本ではネット検索市場で長年ヤフーの後塵を拝している ⇒ 2010年ヤフーと提携、グーグルの検索エンジンがヤフージャパンで採用され、圧倒的なトップシェアを握ったが、契約期間満了後の継続の保証はない
脱稿後の動き
Ø  エジプトでグーグルの幹部が旗振り役の1人となった民衆革命により、ムバラク大統領の長期独裁政権が倒れた
Ø  アメリカのFTCが、ネット検索とオンライン広告におけるグーグルの手法が反トラスト法違反ではないか正式な調査開始
Ø  「エメラルドシー」プロジェクトが2011.6.「グーグル+(プラス)」としてサービス開始 ⇒ Facebookを脅かす存在に
Ø  スマートフォン市場での特許紛争激化対策として、モトローラ・モビリティ(17千の特許保有)125億ドルで買収

第1章     グーグルが定義する世界~ある検索エンジンの半生
2010.2. 本の電子化を巡り、米作家協会や米出版社協会がグーグルを提訴 ⇒ グーグルに対する不信感と恐怖から、グーグルの存在そのものの否定までが渦巻く
1960年代 ナチスから逃れて米国に来たジェラルド・サルトンがハーバードで博士号を取得した後、コーネルでコンピュータ科学研究科の共同設立者になり、「自然言語」と呼ばれるデータベース検索を始め、後に情報検索のモデルとなる「SMART」システムを開発 ⇒ インデックスやウェブページの重要度を測定するアルゴリズムなどを含め、検索テクノロジーで重要な役割を果たすルールや仕様を確立
1995.12. アルタビスタが公開 ⇒ ウェブ上のすべてのページを1カ所に集めたが、リンク構造を利用する機会を逃していた
1996 ページとプリンによるページランクの開発 ⇒ リンクの数と同時に誰がリンクしているかに注目、5億もの変数を用いた方程式で各ページの重要度を算出
スパム ⇒ ウェブサイトの運営者が検索エンジンのシステムをだまして、検索結果で上位に表示されるような仕掛けをすること
「セーフサーチ」 ⇒ 検索結果からポルノをブロックするフィルター機能
ポルノ以外にも、ネットユーザーの大多数がグーグルで検索を行い、アクセス数が一極集中するようになると、検索ランキングで上位に食い込めるキーワードさえ見つければ、数百万ドル規模のビジネスをウェブサイトで展開できるとして、サイトの運営者たちがグーグルのプロセスを分解し、そのメカニズムを分析することで、人工的にページランクを押し上げるために専門知識を駆使するようになっていた ⇒ SEO(検索エンジン最適化)と呼ばれる工程で、グーグルの実用性を確実に損なうので、撃退が必要
ユーザーの検索内容から、次の行動の予測をする手掛かりを掴む ⇒ バーチャル脳

第2章     グーグル経済学~莫大な収益を生み出す「方程式」とは
1999.7. 広告事業に真剣に取り組み始める ⇒ 検索するユーザーの視線の邪魔をしないで、かつ入力されたキーワードに合わせた適切な広告である必要
2001年 最初は、検索結果と関連性の高い書籍があった場合にはアマゾンのページへの直リンクを表示させてオンラインで購入できるようにした ⇒ アマゾンへのリンクを辿って本が購入されると、リンクを掲載したサイト運営者に5%のアフィリエイト料を支払う ⇒ その後も初期の検索広告は、伝統的な広告と同じビジネスモデルで、何人が広告を見たかで広告掲載料金が決まるCPM(クリック1000回当たりの料金)方式を採用
「アドワーズ」という広告システムの開発 ⇒ 広告であってもユーザーが必要とする重要な情報を提供すべきというプリンの主張に従い、中小・零細広告主を対象にしたセルフサービス型広告システムで、広告主自ら有料でキーワードを選択し、グーグルで誰かがそのキーワードを使って検索すると、広告主のウェブサイトにリンクされたテキスト広告が表示される仕組み
2002年 アドワーズセレクト(改良版) ⇒ CPMの代わりにCTR(クリックスルーレート:表示された広告に対しクリックされた割合)を採用。広告システムそのものに広告の品質を管理する機能を組み込んだ ⇒ グーグル独自の基準で広告の質を判断することが反発を招いたが、グーグルの業績は初めて黒字化
広告営業の世界にも劇的な変化をもたらす ⇒ 規模の大小に拘わらず広告主の力関係を「平等化」したほか、広告の結果・効果を測定可能にしたばかりか、結果が出ない場合には広告内容に改良を示唆したりもした

第3章     邪悪になるな~グーグルはどのような企業文化を築いたのか
ページとプリンは2人とも幼少時代に「モンテッソーリ教育」を受けたことが、グーグルの企業文化に影響 ⇒ 子供には自分が興味を持ったことを追求する自由を与えるべきという教育哲学
企業として遊び心を失わない ⇒ エイプリルフールが最も神聖な「祝日」
20%ルール ⇒ 創業まもない頃の規則で、1/週は業務以外のプロジェクトに自分の時間を使えるもので、3MHPの同じ制度を真似たもの
創業時からプリントページが抱いていた企業文化に関する理想主義を企業理念や価値観としてまとめたのは2001年にクライナー・パーキンスのジョン・ドアーの推薦でエグゼクティブコーチとしてグーグルにきたビル・キャンベル(インテュイット会長) ⇒ エンジニアリング部門のブックハイト(1999年インテルから転職、社員番号23、後にG-mailを立ち上げ)の提案した「邪悪になるなDon’t be Evil」の社是を生む
株式公開も、創業者はどちらでもよかったが、公開する以上はグーグルの価値観が毀損されることのないよう、バフェットのバークシャー・ハサウェイが採用したデュアルクラス・ストック制度を使って会社の意思決定権や支配力を失わないように配慮。さらに、IPOの際の公開価格をオークション方式で決定し、プロセスの平等性と経済的利益の同時確保に成功。IPOの目論見書(S1ファイル)にも、企業情報は最低限とし、バフェットに倣って投資家への個人的な「手紙」を書いて、社是と共にグーグルの考える株主と会社の関係を説明
702010」 ⇒ エンジニアの配属先決定にあたってのルールで、70%を検索か広告の部門へ、20%をアプリケーションのような重要な製品の開発に、残り10%を何でもありのプロジェクトに配属

第4章     グーグルのクラウドビジネス~全世界に存在するあらゆる文書を保存する
G-mailの最大の特徴は保存容量 ⇒ ウェブメールサービスの開発によって検索機能を兼ね備えた大容量(1GBで、他の先行サービスの5001000)の無料サービスを開始
当初は、グーグルの潤沢なサーバースペースを有効活用するものだったが、あらゆる情報がオンラインで保存されるようになるのは明らかだった
マイクロソフトの2大収益源(ウィンドウズとオフィス)のうち、オフィスに照準 ⇒ ウェブ上のアプリケーションの開発 ⇒ 「グーグルドキュメント(ワープロ、エクセル、パワーポイントのウェブ版)
次のステップは、マイクロソフトのインターネット・エクスプローラーに対抗して、インターネットに接続するための独自のブラウザの開発 ⇒ ネットスケープがAOLに買収された際の資金で設立された非営利組織モジラ財団と提携、グーグルは既に財団の主要製品の一つファイアフォックス(オープンソースブラウザ)のデフォルトの検索エンジンとなるために年数百万ドルを支払っており、財団にとっての最大の収益源だった。グーグルが最初に開発したクライアントアプリは、ツールバー(ブラウザにインストールするとグーグルの検索ボックスが常に表示されるようになる)
独自のブラウザは、「グーグルクローム」として完成
次いで「グーグルデスクトップ」 ⇒ グーグルの技術を使って、自分のパソコン内の情報をウェブ検索と同じように簡単に検索できる機能
「グーグルパック」 ⇒ グーグルが無料で提供していたソフトウェアのセット、現在はウェブアプリに移行しているため廃止
Gドライブ」 ⇒ 5GBまで無料のストレージサービス。12.8.時点では「Never N ドライブ」という30GBまで無料、容量無制限のWindows Live meshというサービスもある
「グーグルドキュメント」を利用すれば情報はクラウド上に保存されるので、ファイルを使う必要がなくなる ⇒ Gドライブも不要となるし、無線LANが使えない場合に備えて3D携帯モデムを用意すれば、いつどこにいてもすべての情報にアクセスできる

第5章     未知の世界への挑戦~グーグルフォンとグーグルTV
2004年 ルービンが、アンドロイドという携帯端末用モバイルOSを通信キャリアに売り込むに当たり、グーグル検索とGメールの搭載を検討、グーグルに持ちかけると、グーグルから買収の提案を受ける ⇒ 05.7.買収成立
これまでキャリア側は携帯電話で実行するソフトを厳重に管理してきたので、グーグルは自社サービスを携帯ネットワークで展開できる見込みはないと考えてきたが、汎用OSの採用によってネットワークのオープン化が進めば、グーグルは無限の可能性を手に入れることになる ⇒ 膨大なコストをかけて開発したOSを無償で提供しても十分元が取れる公算があることになる
07.1. iPhone発売 ⇒ グーグルとアップル、特にジョブズとプリンは馬が合った(グーグルのシュミットがアップルの取締役になっていた→09.8.辞任)ので、iPhoneにグーグルマップとYouTubeの搭載を持ちかける一方で、グーグルは自社のモバイル技術に重きを置くようになる ⇒ クロームがアップルのブラウザのサファリと競合するとともに、アンドロイドがiPhoneの完全なライバルになるに及んで、両者の友好関係は破綻 ⇒ ピンチやスワイプ機能はアップルの特許だとして使用を差し止め(10年には復活)
モバイルネットワークのオープン化 ⇒ FCCに働きかけて、次の2008年の周波数帯の入札の際の条件とさせることに成功
08.10. アンドロイド携帯の1号機発表 ⇒ ATTが独占していたスマートフォン市場に、他のキャリアが参入するチャンスをもたらすとともに、OSがオープンソースであるという潜在的な利点を生かしてアプリ開発の可能性を広げた
「グーグルニュース」 ⇒ アルゴリズムで掲載する記事を自動的に選択
04年 ネット上の画像保存サービスを提供する会社ピカサを買収 ⇒ 同じクラウド系写真共有サイト「フリッカー」ほど人気は出なかった
04年 高解像度衛星画像を提供する会社を買収し、「グーグルアース」を開発
06年 ユーチューブ買収 ⇒ ウェブテレビへの進出計画は不発に終わったが、代わりの買収でウェブ画像の爆発的増加をもたらす。最初は「グーグルビデオ」として有料配信を考えていたが、ネットの裾野から動画を吸い上げることを考えたユーチューブを見て方針を変換、動画にグーグルの検索を導入することに成功
バイアコムから著作権侵害で提訴 ⇒ 10.6.著作権者から「侵害」を直接指摘されない限り侵害には当たらないとして却下

第6章     谷歌~中国でぶつかった道徳上のジレンマ
2010.1. ネット検索サービスの中国本土からの事実上の撤退を発表 ⇒ 根底にあったのは検閲問題だったが、引き金を引いたのはサイバー攻撃。情報セキュリティに関してはどこにも負けないと自任していただけにショック
04.10.プリントページが初めて中国訪問、中国のグーグルに匹敵する「百度」(宋時代の漢詩:人ごみの中で何度も探し回った挙句、やっと見つけた。01.9.サービス開始)に出資決定 ⇒ 2.6%5百万ドルで買い取り、06年に60百万ドルで売却
グーグルへのアクセスが、当局の検閲によって度々遮断されることは分かっていた(02年初めてグーグルへのアクセスを遮断)が、中国市場への本格進出を決定 ⇒ 中国国内のウェブサイトから、除外すべきキーワードを洗い出し、検索結果に現れないよう配慮が必要
05.5. 中国でマイクロソフトの研究開発部門を統括していた副社長で中国人の技術者(グーグル検索を高く評価しビル・ゲーツにグーグルの買収を進言したが、グーグルが10億ドルを要求したため破談になった経緯あり)の引き抜きに成功したが、競合禁止条項に抵触して接触できず。06年和解によって制約はなくなり、同時にグーグルの中国でのサービス開始 ⇒ 様々な制約があったとしても、サービスを提供しない方がもっと悪いという結論。06年に決めた会社名は「谷歌(グー・ガー)」、「谷」は「穀」の簡体字で、「穀物」という意味もある。
米国下院国際人権小委員会が米国IT企業の中国政府に加担している実態を調査 ⇒ ヤフーは反体制派ジャーナリストの素性を中国政府に通報、マイクロソフトは中国政府の要求に応じて反体制派ブログを閉鎖、シスコシステムズは「グレート・ファイアウォール」の核をなすテクノロジーを中国政府に提供、グーグルは中国政府と手を組んで検索結果を検閲 ⇒ これ等の企業は公聴会に呼び出され、ホロコーストを生き延びた人として初めてアメリカの連邦議員に当選したハンガリー出身のラントス議員から徹底的に絞られた
何を検索結果から削除すべきかについて、中国の情報省から毎日のように指図があった
愛国主義に訴えた「百度」の戦略の成功と、中国政府の意図的な妨害によって、グーグルを検索として使うユーザーはなかなか増えず
中国国内では個人情報を保管せず、そのため主要なサービスの多くを中国では提供していなかった ⇒ Gメール、ブロガー、ピカサはなく、ユーチューブは完全に遮断
グーグルマップが広州の大雪で威力を発揮
07.4.中国語の文字入力システムの開発 ⇒ 最低限のキーボード入力を手掛かりに、ユーザーの意図する漢字を予測して提案するシステムにより、ユーザーの行動を予測 ⇒ テストの段階で他社のデータを登用する事件発覚
中国では知的財産を盗み出されるケースが多いため、よその国ではエンジニアに認めているプログラムのソースコードやデータセンターへのアクセス権を中国ではき厳しく制限 ⇒ 2級社員として扱われているとの不満が現地採用の社員に広まる
中国の政府対策のため、官僚にiPodを送っていたことが発覚、中国ではごく当たり前だったが、グーグルの企業方針に反するばかりか、アメリカの海外腐敗行為防止法にも抵触する行為として本社から解雇 ⇒ 本社の調査員の司法機関さながらの捜査活動に現地スタッフが憤慨
大きな転機は08年の北京オリンピックの年。国際的なスポットライトを浴びるイベントを前に、中国政府はインターネットに対する制限を強化しようと考え。「.cn」のドメイン上の検索サービスだけでなく、「google.com」の中国版でも検閲を行うよう求めてきた。これを呑めば世界中の中国語を話す人々に対する抑圧の片棒を担ぐことになり、マイクロソフトなどほかの検索サービスは応じることを決めたが、グーグルは抵抗。オリンピックが終われば政府が態度を変えるだろうと期待したが、逆にエスカレートし、国内の総てのコンピュータに「緑壩(りょくは:Green Dum)」というフィルタリングソフトの搭載を義務付ける方針を出す ⇒ 表向きはウィルスとポルノサイトの遮断にあったが、巨大な「グレート・ファイアウォール」を一般家庭やオフィスに広げることが狙いだというのが定説。メーカーの抵抗で見送られたが、政府が締め付けを強化していることは明白
09年 「.cn」の検索サービスにアクセスしたユーザーを自動的に「google.com」のウェブサイトに導くリンクを張ったが、中国政府はそのリンクを外すよう要求
さらに「グーグルサジェスト」機能(ユーザーが検索したいキーワードの最初のいくつかのキーを入力した段階で、ユーザーの意図を推測して候補を表示する→中国語の入力が面倒だったところから開発されたサービスで、やがて世界中に拡大)に関し、表示されるキーワード候補の中に性的な言葉が異常に多く含まれていると中国政府が考えて処罰を迫ってきたことも不幸の原因
09.12.には、グーグルのコンピュータシステムがハッキングされたが、そのセキュリティシステムの中核をなすソースコードまでが盗まれていることが判明、その経路を辿ると、サイバー攻撃のレベルの高さと狙われた標的の性格から、中国政府の深い関与が伺われ、ハッキング自体が目的ではなく、特定の情報を盗み出すという明確な目的を持った行為にグーグルも驚愕、重要情報が盗まれたばかりか、一部のGメールアカウントもハッキングを受けていたことが判明、しかも侵入されたのは中国の反体制活動家や人権運動家のアカウントだった
同様のサイバー攻撃を受けた40社余りの他のアメリカ企業が事件を公にしないことにも反発し、遂にグーグルとして「.cn」の検索サービスで検閲をやめることを決定。数週間後「.cn」のウェブサイトを閉鎖したが、音楽やグーグルマップなど検索以外のサービスは同じサイトで提供することとし、中国政府もグーグルの免許を更新
グーグルの鉄壁を誇ったセキュリティシステムが、中国政府のサイバー攻撃の前に無力だったことで、グーグル社内での高いバリア構築にエンジニアたちは不便を感じるようになったが、中国で邪悪な行動をとった罰と受け取られた

第7章     グーグルの政治学~グーグルにとっていいことは、人々にとっていいことか
07.11. 翌年の大統領選を前に、オバマがグーグル本社訪問 ⇒ グーグルは次々と立候補者を招いて社内で集会を開催したほか、特定の候補者を支持する代わりに中立の立場で、各陣営にテクノロジーを提供し、選挙戦で大きな役割を果たす
オバマはグーグラーと同じ思考様式を示して圧倒的な支持を得ていた ⇒ スピードとスケール、そして何よりデータを重んじることにより成功を手にした点で共通
グーグルの社員の1人が、オバマ陣営のオンライン選挙活動にグーグル的手法を持ち込んでマケイン陣営を圧倒
ホワイトハウスから「市民参加ディレクター」という新設ポストへの就任を打診され、何倍もの報酬やストックオプションを放棄して何人かのグーグラーが政権入り ⇒ CEOのシュミットが大統領科学技術諮問委員会のメンバーになったほか、連邦通信委員会FCCの委員長や最高情報責任者CIO、副技術責任者等 ⇒ オバマですら使い慣れたブラックベリーをホワイトハウスで使う許可を取るのに難儀したくらいで、一般の職員は古いウィンドウズ・コンピュータの使用を義務付けられたほかインターネットツールの多くが禁止され、Facebookもグーグルトークも禁止、Gメールもツイッターもスカイプも使えず、さらにはエンジニアと全く接触がなかったこともあって、当初描いていた夢の多くは潰え去った
10年前、ラリー・ページは、人々が簡単に真実を知るための手立てを得れば、世界がもっと良くなると考え、グーグルはその手立てを提供したが、世界はほとんど変わっていないように見えた
07年 ダブルクリック社買収の際、反トラスト法の問題が持ち上がる ⇒ グーグルの検索連動型広告に対し、ディスプレー広告(ウェブページの一部を占める画像や動画などの広告で、広告料金はクリック数ではなく、広告の表示回数を基準として支払われる。広告主からは、同一の会社が両方の広告を扱ってくれた方が使い勝手がいい)のトップ企業で、買収しようとしたのはグーグルが創業当時の信念を変えたことの現れ(ディスプレー広告はウェブページへの邪魔な侵入者であり、排除すべきものと考えていた) ⇒ 31億ドルで買収(創業以来最大の買収)。反トラスト法は不当な言いがかりだったが、調査は長く・過酷なものとなった
ダブルクリックの持つ強力なツールが「クッキー」 ⇒ ウェブサイトの訪問者を特定するために、サイトがユーザーのコンピュータに埋め込むデータのこと。ユーザーを特定できればその人物の過去の閲覧履歴などの情報を活用してその人に適した広告を瞬時に表示できる
グーグルはダブルクリックの買収を通じて得た「クッキー」のお蔭で、ユーザーのネット上の行動に関して収集できる情報の範囲が飛躍的に拡大 ⇒ 元々のグーグルにアクセスした場合のアドセンスのクッキーに代わってダブルクリックのクッキーを埋め込むことにより、広告をクリックしなくてもウェブサイトやブログにアクセスしただけでクッキーに記録されるようになった。1つのクッキーによって、ネット上のほぼすべての場所でユーザーのアクセス履歴を追跡できるようになった ⇒ プライバシー保護のため、9か月後には検索履歴データを完全に匿名化し(IPアドレスの情報を削除)18か月後にはすべてのデータを消去
この頃、グーグルが初めてテレビ中継に広告を出したのも、方針転換の一つ
「グーグル・ラティテュード」 ⇒ GPS搭載の携帯を通じて5分おきに現在地を表示することによって、過去の行動がすべて把握される。プライバシー保護と衝突
「ストリートビュー」 ⇒ 最大のトラブルの種。国によっては地図サービスを安全保障上の理由で禁じたり(インドなど)、免許制(中国)にしたりしているし、ヨーロッパでは公の場で撮影された写真であってもプライバシー保護の観点からネット上に乗せるべきではないとしている
ストリートビュー用に撮影する車を走らせる間に、通過地点近くの無線LANでやり取りされる個人データを、「意図せず」に取得していたことが判明 ⇒ パスワードで保護されていないWiFi機器は全て、通信の内容をグーグルに記録される危険があった ⇒ ユーザーの通信データを収集する行為はデータセキュリティ関連の法律に違反する可能性大
08.2. マイクロソフトがヤフーに対して480億ドルのTOBを仕掛けた際、グーグルがヤフーと提携して阻止しようとしたときにも、ネット検索市場のトップと2位が提携したことで反トラスト法捜査の対象となる ⇒ 提訴の直前に提携を解消して事なきを得たが、翌年ヤフーが、マイクロソフトによる買収の最大の狙いだった検索事業を僅か10億ドルで売却したため、グーグルにとっては状況が悪化した
08年春 司法省による新たな反トラスト法の捜査が入る ⇒ 90年代にマイクロソフトを提訴した弁護士がオバマ政権で司法省に入り、クラウド時代のオンライン・コンピューティング市場で唯一包括的なソリューションを提供できる会社として独占を強めつつあるグーグルを採りあげ、マイクロソフトの時と同じ問題が起きると言い出した ⇒ どんな新しいビジネスでも、常に反トラスト法で提訴される危険と隣り合わせになった
書籍の検索(プロジェクト「オーシャン」) ⇒ 全世界の書籍総数130百万冊。既にデジタル化に着手していた図書館もあったが、問題は著作権。「変形的利用」(新しい価値を生み出すための素材として既存のものを用いること)であれば違法ではないとする判例に従って進めようとしたが、スキャンを許可されたのは全て著作権切れのものだけだった
03.10. アマゾンが、同様のプロジェクトを進めていたことが判明、過去に出版されたすべての本をデジタル版で購入できるようにすると宣言 ⇒ アマゾンは何百社もの出版社と契約を結んでいたので著作権の問題とは無関係
05.10. いくつかの出版社が米国出版社協会の支援を受けて著作権侵害の集団訴訟を提起、米国作家協会も同様提訴 ⇒ 世界の役に立つのかという点からプロジェクトを進めたグーグルにとって、その考え方を受け入れない人が大勢いることがショックだった
08.10. 和解案が提示されたが賛否両論 ⇒ 10.2.司法省も介入
グーグルはあくまで論理的に正しいのは自分たちだと考え、論理立てて説明すれば意図が善良なものだとまでは思ってもらえなくても、その行動が社会に害を与えるものではないことには納得してもらえるはずだと考えていた。データを見せ、客観的な事実に異を唱えることは誰にもできない、自分勝手な思い込みを真実だと言い張る権利は誰にもないと考えていたが、グーグルのサーバーの外のリアルな世界ではデータと論理だけで勝利を手にできるとは限らない

エピローグ~追われる立場から追う立場へ
Facebookの登場 ⇒ サイト自体が小さなインターネット
Facebookとの広告契約を巡ってグーグルとマイクロソフトに入札競争で敗退
グーグルで広告システムの礎を築いたサンドバーグを始め、何人ものグーグラーが転籍
Facebookが付きつけた哲学的パラダイムの転換こそ最大の脅威 ⇒ ネット上の厖大な情報資源を活用するより、SNSで時間を過ごす方が人々のオンライン生活の中心になるのではないか
グーグルにとっての最大の皮肉は、SNSが爆発的成長を遂げる瞬間に居合わせながら、自らが創造したサービスのポテンシャルと見抜けずにみすみすチャンスを逃がしたこと
02年にSNSのアイディアを思いつき、1か月で数十万人の登録を獲得したが、余りの急激な拡大にシステムが追い付かず、たびたびパンクしたためユーザー離れが起こって、グーグルも対応しなかったことがプロジェクト頓挫の原因 ⇒ ブラジルでグーグルは検索に過ぎず、SNSこそがインターネットであると一大センセーションを巻き起こし、ブラジル最大のSNSに成長。インドでも最大、かつ検索とGメールを抑えてグーグルで最も人気のあるサービスになっている
05.5. モバイルSNS分野の小さな企業を買収した時も同じ失敗をしている ⇒ ツイッターの萌芽で、本社の会議でも、SNSが熱狂的なブームを巻き起こし、社会現象になろうとしていると主張してもトップが耳を貸さなかった
SNSは基本的に友人からの個人的な推薦やアドバイスのほうが全人類の英知とそれを代表するグーグルの検索エンジンより価値の高い情報を提供するという前提に基づいているところから、アルゴリズムこそが唯一の正しい答えを提供するという前提で立ち上げられたグーグルには全く受け入れられない考え方だった
10.2. 「バズ(口コミ、ざわめき)」というSNSを発表したが、Gメールの連絡先リストに基づいて自動的にソーシャルネットワークが作成される方式がデフォルトになっていたため、他のユーザーに見られたくない連絡先やメールの内容までが公開されてしまい、一大プライバシー問題を引き起こし、サービス停止に追い込まれる
09.6. マイクロソフトもヤフーと組んで検索事業に本格進出してきた ⇒ 新しい検索エンジン「bing」が始動
10.8.9. グーグルがベライゾンと共同で、地上回線ではネット中立性を維持するが、急成長中で動きの激しい無線ネットは規制から除外すると提案、AT&Tがこれを支持して混乱に拍車 ⇒ 未解決だったストリートビューによる無線LAN傍受の件と相俟ってグーグルに対し激しい批判の声が上がり、「邪悪になるな」といわれたのは皮肉
10年後半には自走式ロボットカーの加州内の走行テストに成功 ⇒ 周囲の環境をレーザーやセンサーでスキャンし、ストリートビューのデータでそれらの知識を補強しながら走るもので、創業当時から人工知能の会社と定義していたグーグルの専門分野の一つだったが、グーグルが製造した自走式ロボットカーに乗る日が来るのだろうか
グーグルは今後も常識を覆すような試みに挑戦していくことだろう。そして多分不可能を可能にする試みにも

訳者補追
Ø  シュミットは、自分の政治献金に関する情報をグーグルのインデックスから削除させようとした。また、グーグルの検索を使ってシュミットの個人情報を調べて記事にしたジャーナリストを出入り禁止にした
Ø  検索連動型広告でネットの金脈を当てた後も、競合他社の注意を惹かないよう、IPO直前までその事実を外部の視線から隠し続けた ⇒ シュミットはこれを「隠蔽戦略」と呼び、社内の最優先課題の1つとした
Ø  アップルのジョブズは、アンドロイドの登場で生じたスマートフォン市場での競合関係について、「教え子」も同然のペイジやプリンの会社に「ペテンにかけられた」と考えていた。ある時、グーグルが社是に掲げている「邪悪になるな」は「でたらめだ」と吐き捨てるように言った
Ø  中国市場に進出した後、グーグルは中国政府に睨まれないように自主規制を行い、検索結果を自発的に「検閲」した



グーグル ネット覇者の真実 スティーブン・レヴィ著 技術から企業文化まで幅広く分析 2012年2月26日付日本経済新聞朝刊書評 
フォームの始まり
フォームの終わり
 洗練されたデザインで使いやすい製品を生み出すアップルの素晴らしさが理解しやすい一方で、グーグルについては、何がそんなにすごいのか、いまひとつ理解しにくいと思っている方が多いのではないだろうか。その原因はグーグルが情報という、触ったり感じられたりしない、バーチャルなものを扱っているからだろう。実は、グーグルの提供している価値は情報ですらなく、「すべての情報を整理してアクセス可能にする」(つまりアクセス可能性)という抽象度の高さだ。ネット上に流れる情報をひたすら整理するだけで、どうして2011年第3四半期だけで27億ドルも利益を上げることができるのか?
(仲達志・池村千秋訳、阪急コミュニケーションズ・1900円 書籍の価格は税抜きで表記しています)
 しかし、分からないではすまされない。物財を大量生産して、匿名の大衆に大量販売して拡大してきた20世紀型文明にかわって、消費者側が発信する情報に耳を傾け、個々の消費者が欲しい時に欲しいものを、無駄なく届ける21世紀型の情報文明が始まっていて、そのメカニズムを理解しないものは、脱落するからだ。
 本書はそんな情報文明の覇者ともいえるグーグルについて、膨大なインタビューに基づいて、意思決定や設計に携わった個人の背景や考え方にまでたどって分析した労作である。技術から企業文化にいたるまで、グーグルの成り立ちがよくわかる。単なる称賛に終わらずに、技術集団としての考え方と広告ビジネスモデルとの葛藤や、既存の価値観や中国などにおける体制との摩擦の悩み、さらにはフェイスブックなどのSNSが突きつける情報アクセスの新思想など、課題についても正面から取り上げている。また、価値の源泉が情報であるとしても、その背後には巨大なデータセンターなどを持つ設備企業であることも改めて認識させてくれる。グーグルという会社のガードの固さを良く知っている者としては、よくぞここまで踏み込んで取材したものだと感心する。
 情報産業になじみのない方にとっては、多少難解な用語が出てくるが、あまり気にしないで、背後にある情報への考え方や、経営思想などを読み取っていただけたらと思う。
(慶応大学教授 国領二郎)

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