タックスヘイブンの闇  Nicholas Shaxon  2012.8.27.


2012.8.27.  タックスヘイブンの闇
Treasure Islands : Tax Havens and the Men Who Stole the World

著者  Nicholas Shaxon 『フィナンシャル・タイムズ』紙、『エコノミスト』誌を始め多数の媒体に寄稿するジャーナリスト。イギリス王立国際問題研究所の研究員

訳者 藤井清美 京大文卒。1988年より翻訳に従事

発行日           2012.2.29. 第1刷発行      4.10. 第2刷発行
発行所           朝日新聞出版

タックスヘイブン(租税回避地)が、犯罪の世界と金融エリートたちを、外交・情報機関と多国籍企業を繋いでいる。紛争を促進し、金融の不安定を生み出し、大物たちに莫大な報酬をもたらしている。それは、まさに世界を支配する権力の縮図なのだ

プロローグ 表玄関から出て行って横手の窓から戻って来た植民地主義
ガボンは、1960年フランスから独立したが、旧宗主国は産油国への実効支配を確保するべく扉の陰から支配し続ける方法を見つけ出す ⇒ 少数民族の代表ボンゴを32歳で世界最年少の大統領に押し立て、大統領官邸と地下通路で繋がる駐屯地に数百人の空挺部隊を配置、以後ボンゴの死まで42年間というリーダー在位の最長を記録するまで支援
フランスは見返りに鉱物資源のほぼ独占的な採掘権を極めて有利な条件で獲得、腐敗の坩堝と化す ⇒ 2007年サルコジが大統領に就任した時、最初に電話をした外国首脳がボンゴだった ⇒ 現在は息子が後を継いでいる
200809年 世界の首脳たちがタックスヘイブンを強く非難して以来、オフショア・システムは解体された、少なくとも適切に管理されるようになっているという印象が生み出されてきたが、実際はその正反対のことが起きており、ハイペースで成長している

第1章     どこでもない場所へようこそ
世界の貿易の半分以上が、少なくとも書類上はタックスヘイブンを経由している
銀行資産の半分以上、および多国籍企業の海外直接投資の1/3がオフショア経由で送金
国際的な銀行業務や債券発行業務の85%がユーロ市場で行われている
2010年島嶼部の金融センターだけでBSの合計額は18兆ドル(IMF推計:世界総生産の1/3に相当)
タックスヘイブン ⇒ 単に租税回避地のみならず、守秘性、金融規制の回避、諸国家の法令からの自由などを提供しているところから、本書では、「人や組織が他の法域の規則・法律・規制を回避するのに役立つ政治的に安定した仕組みを提供することによって、ビジネスを誘致しようとする場所」と言う広い定義を使う
社会から受ける恩恵に伴う諸々の義務(納税や法令順守等)から逃げ場を提供することがコアビジネスとなっている場所のこと
オフショア・ビジネス ⇒ 国境を越えた資金移動の書類上のルートを人為的に操作すること
世界には約60の守秘法域がある ⇒ 4つのグループに大別
     ヨーロッパのタックスヘイブン ⇒ 第1次大戦中に、各国が競って戦費調達のために税金を大幅に引き下げたために、本格的に活動を始める
     ロンドン ⇒ 「シティ」を中心とするイギリス圏で約半分を占める
     アメリカを中心とする勢力圏 ⇒ 元々タックスヘイブンの利用には強い異議があり、1961年にはオフショアを利用した不正な税金逃れを取り締まろうとしたが、80年代になって政策を逆転させ、世界で最も重要なタックスヘイブンに変貌させた
     何処にも分類できない変わった場所 ⇒ ソマリア、ウルグアイ
世界一重要なタックスヘイブンは「マンハッタン」であり、次いでロンドン

第2章     法律的には海外居住者
オフショアの起源 ⇒ 1934年アルゼンチンの沿岸警備隊の匿名の通報に基づく外国の食肉処理業者カルテル捜査で発覚。イギリスの最も富裕な一族のメンバーで、個人としては史上最大規模の脱税を行ったウィリアムとエドモンドのヴェスティ兄弟こそ、グローバル企業のパイオニア。1897年シカゴで買い付けたくず肉を故郷のリバプールで販売したのが始まり。世界各地に冷凍倉庫や小売店舗を増設、海運業にも進出、あらゆる市場を独占的に支配し、巨利を貪った
世界で初めて所得税の総合課税制度を導入したイギリス政府に対し、税率の低い国に利益を移すことで対抗
さらには信託の活用によって、資産の所有権を切り離すことで課税を回避
イギリス政府とは、課税を巡ってのいたちごっこが続く

第3章     中立という儲かる盾
1932年 パリ警察が内部告発者からの情報に基づきバーゼル商業銀行のパリ事務所を家宅捜索、脱税者を摘発 ⇒ 容疑者は2000人に増え、高位高官も多数いた
ヨーロッパ諸国の政府は、税収を失うことだけでなく、ドイツの資本がスイスに逃避することで、ヴェルサイユ条約によってドイツに課せられた賠償金の支払いが滞ることも心配
フランスは厳しい緊縮予算を組んでおり、予審判事38人全員で対象者の取り調べに当たるが、スイス政府は一切の協力を拒否
長らくスイスの銀行の守秘性は、ドイツのユダヤ人資産保護のために導入されたと言われてきたが、本当のところは、上記のパリで暴かれたスキャンダルに端を発して1934年に銀行の圧力から銀行の秘密保持違反を罰金刑や禁固刑の対象となる犯罪と定めた法律の制定にある
守秘性はスイスの歴史に極めて古くから深く根を下ろしていて、スイスこそ最古の、そして最強のタックスヘイブン ⇒ 13世紀のウィリアム・テルの物語に遡る。地の利を生かして圧政に勇敢に抵抗した山岳国というスイスの自己イメージ(「ゾンダーファル」 ⇒ 自身を世界の他の人種より優れていると信じる、小さな優越人種という自己イメージ)
4つの言語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、東部農村部でのロマンシュ語)からなる独立独歩の山岳コミュニティ間の差異を、①外国の紛争での中立維持と②直接民主主義を基礎とする極めて複雑で分権的な政治システムの構築(頻繁に国民投票を行うことによって憲法を絶えず進化させている)によって乗り越え、1815年のウィーン会議においてヨーロッパの中での中立が公式に認められた
連邦政府、26のカントン()2750余りの市町村がそれぞれ課税権を有し、それぞれが各1/3の税収を得ている ⇒ 州や市町村が競って税率を引き下げ、海外からの投資を誘致。ツーク州には人口の1/4に相当する27千の企業が存在
スイスの政治における「コンコルダンス(調和)」が外国の金融資本家を安心させる ⇒ 派閥間の交渉による合意に基づいて行う政治で、自分の党の利益より集団としての意思を尊重しなければならない
特に金融部門の守秘性は何百年も前からあり、カトリックのフランスの国王たちはジュネーヴの銀行の口の堅さを重宝していた(異端のプロテスタントから借金していることが明るみに出たら破滅していた) ⇒ 1713年ジュネーヴ(当時は独立の都市国家)の参事会が銀行の守秘義務を規定したのが始まりだが、スイスの銀行業が本当に栄え始めるのは、スイスのエリートたちが帝国を夢見るようになった19世紀のこと。186070年代に周辺諸国が先を争って海外帝国の建設を進める中、自らの帝国建設のために中立国の道を選択 ⇒ 1618年の30年戦争の時ほどスイスにとって商売が好調で生活水準が高かったことはないという事実に気付き、1870年の普仏戦争で裏付けられた ⇒ 第1次大戦中から各国が戦費調達のために税率を引き上げていたことから、富裕な市民は税金逃れのためにスイスの銀行を頼った
多くのスイス人にとって、第2次世界大戦はスイスの例外主義を明確に示したレジスタンスとヒロイズムの時代 ⇒ スイス軍は山岳地帯に撤退し最後まで戦い抜くと宣言したが、それほど綺麗ごとではない裏話が潜む ⇒ 政治難民を保護する憲法上の義務にも拘らず、1933年ヒトラーの政権掌握直後にユダヤ人難民の亡命を人種難民とという理由で事実上拒否する法律を制定(ゲシュタポを説得してユダヤ人のパスポートに「J」というスタンプを押すことまで約束させた、ただ多くの国民は反ナチスで移住してきたユダヤ人を歓迎し保護した) ⇒ 開戦と共にユダヤ人の流入を完全にシャットアウトしたが、経済的中立は「未知の法的概念」と言われるように、開戦間もないころからドイツの高位の人物や企業はドイツの敗戦に備えてスイスに富を移転。ドイツ経済省ですら海外資産を隠すためにスイスに外国為替管理局を新設。ヒトラー自身もヨーロッパ各地で略奪した大量の貴金属や美術品をスイスに保管、ドイツがスイスを攻撃しなかったのはヒトラーの「金庫」だったからと言われる
現代のタックスヘイブンが途上国から大量の汚職マネーを受け入れてきたように、スイスは政治的庇護を軸とするヒトラーの腐敗システムに直接かつ積極的に加担していた
1941年 スイス政府は、ドイツの金の備蓄と外貨準備が払底したのをみて850百万スイス・フランの融資を行いスイスのメーカーが武器や計器を供給。各国からドイツとの貿易を制限しろという「理不尽な」要求に対し、逆に日本との貿易の権利まで要求したり、42年秋にスイス赤十字がナチスによる集団虐殺に抗議声明を出そうとしたときにはスイス政府が沈黙を命じた
44年のノルマンディ以降中立国の金保有量や略奪品の流入が急増したのを見て連合国が受け入れ拒否を迫るが、スイス銀行協会もドイツとの協力停止を約束したものの、あくまで自主規制
44.12. チャーチルは、スイスのことを「栄誉を与えられる最大の権利を持つ国」「山岳地帯で自衛しながら自由を支持し、思想的には人種の違いにもかかわらず概ね我々の側にいる民主国家」と賞賛したが、スイスの指導者や銀行には絶対に当てはまらない
45.2. 連合国の勝利確定でスイスは新たに譲歩し、ドイツ資産の凍結とナチスの略奪資産の本来の所有者への返還を約束したが、イギリスが自国の匿名口座への波及を恐れて慎重になり、スイスはさらにドイツの高官と秘密協定を結んで、略奪した金塊3トンの受け入れに走る
45.5. ドイツ降伏により、アメリカの怒り、スイスのごまかしと妨害、イギリスの及び腰を柱とする長く複雑な物語が展開 ⇒ イギリスは最後までスイスに好意的で自らの銀行の秘密が明かされることを阻止、スイスはイギリスとフランスに融資を行ったが口止め料に近かった、ドイツの資産の特定手続きはスイスの準公的機関によって行われたが、実際の作業は銀行に委託された結果、ナチスの犠牲者の資産で相続人のいないものは48万フランしかないないと報告され、ユダヤ人団体からの圧力で再三監査が行われ、最後にはスイス議会もヴォルカーを委員長とする独立調査委員会による調査に合意、98年にスイスの銀行は1,250百万ドルで集団訴訟を和解に持ち込んだ ⇒ 虐殺されたユダヤ人の遺族の娘に死亡証明書の提示を求めて資産返還を拒否し続けた銀行も、漸く口座を発見して50万ドルで和解
スイスは依然としてダーティーマネーの世界最大の保管場所 ⇒ 07年には3兆ドルを超えたが、その80%以上は税務当局に申告されていないカネ、イタリア人だけを取ると98%に跳ね上がる
スイスの守秘性を破るためには、個別銀行に直接圧力をかける以外に効果はない ⇒ 2010年アメリカがUBSを締め上げて4000人のアメリカ人顧客情報を入手することにスイス政府も同意

第4章     オフショアと正反対のもの
2次大戦のもう一つの顔は、ケインズ率いるイギリス帝国がアメリカに立ち向かった戦争 ⇒ アメリカの戦争目的の1つがイギリス帝国の破壊にあった
オフショア・システムの構築によって解決されたが、それはだいぶ先のこと
その前にケインズが設計に尽力した国際システムがあり、諸国の緊密な協力と国境を越えた資本移動に対する厳しい規制を伴うもので、今日の細分化された自由放任のオフショア・システムとは正反対だったが、多くの問題点にも拘らず、驚異的な成功を収めた
ケインズが初めて広く世に認められたのは、1919年世界を変えた論文『平和の経済的帰結』によって ⇒ 戦後の平和は理不尽かつ不可能であり、不幸以外の何ものも後に残せないとし、ドイツの巨額の賠償金は、ドイツを荒廃させると同時にヨーロッパを荒廃させ、悲惨な結果をもたらすとした
開戦と同時にケインズはワシントンに派遣され、大恐慌以来失墜した自由主義的金融秩序に代わる世界各国の関係を統治する新しい協力的な国際金融秩序の構築に向けてアメリカとの交渉にあたるが、予想以上に強いアメリカ側の対イギリス不信感に遭って、ブレトンウッズ会議で決まった世界銀行やIMFの体制も自分の思うようなものにすることは出来なかった
ケインズが構想したのは、自由貿易を望むものの、財の自由な移動は金融が政府によって厳しく規制されている場合にのみ可能になると考え、そのような規制がなければ、気紛れな資本の急増が危機を頻発させ、それが経済成長を阻み、貿易を混乱させて自由貿易の信用を傷つけ、もしかするとヨーロッパ諸国のひ弱な経済を共産主義者の側に追いやるかもしれないと危惧 ⇒ 民主主義と自由な資本移動の間には基本的な対立がある
国境を越えた資本の移動を規制することこそ最も効果的な対策 ⇒ その裏には、産業資本家の側に立って、金利は低く設定され維持されるべきという信念があった
金融は社会の支配者ではなく、社会の奉仕者であるべきという信念が、ブレトンウッズで実現されたはずだった ⇒ 逃避資本を受け入れた国が規制の適用に協力して、逃避の被害国と情報を共有すれば守秘性という魅力が無くなって資本逃避は減るはずとしていたが、逃避資本を扱って巨利を得ていたアメリカの銀行がその規制案を骨抜きにした ⇒ ヨーロッパの富が大量にアメリカに流れ込み、ヨーロッパで新しい経済危機が勃発したのに対してマーシャル・プランで支援したが、その実態はヨーロッパからのホットマネーの流入を規制できなかったアメリカの失敗の穴埋めだった
49年ごろからの四半世紀は、ケインズの理論が広く実行され、資本主義の黄金時代となった ⇒ 幅広い資本規制にもかかわらず、豊かな国も途上国も安定した成長を遂げたが、資本規制が世界中で徐々に緩和され、税率が下がってオフショア・システムが本当に繁栄を謳歌するようになると、成長率は急激に低下
1970年代以降に起きたことは、自由な資本移動への回帰ではなく、不自然に増強した金融自由化だった ⇒ 1970年代から金融規制をズタズタにしてきたオフショア・システムが資本の流れを捻じ曲げ、最も生産性の高い投資案件のある場所ではなく、最も高い守秘性、最も緩い規制、文明社会のルールからの自由を見つけられる場所に向かわせる、歪みを生む場として機能してきた

第5章     ユーロダラーというビッガーバン
1955.6. ロンドンのミッドランド銀行で新しいタイプのオフショア活動が見つかる ⇒ 為替管理に違反して、自行の商取引と無関係の米ドル預金を高利で受け入れ、イングランド銀行も警告は出したが、イギリスの弱い外貨準備底上げのためもあって国際ビジネスの新しい分野を潰すことに乗り気ではなかった
56.7. エジプトによるスエズ運河国有化 ⇒ アメリカは、アラブ世界がソ連との連携に向かうことを阻止するため、ポンドが派手に売り浴びせられた時イギリスを支援せず、イギリスはわずか1か月半に4500億ドルの外貨準備を失い、財政破綻寸前に追い込まれ、撤退せざるを得なくなる ⇒ これほどの屈辱はシンガポール陥落以来
スエズ危機が大英帝国崩壊の引き金となったが、同時に帝国をベースとするポンドにリンクした通貨圏(57年当時でもポンドが世界貿易の40%を占めた)の終焉でもあった ⇒ ポンド防衛のための規制に対し、ポンドをドルに換えるだけの動きが加速、イングランド銀行はそれらの新しい動きを放置、イギリスの主権が及ぶ空間で行われていたため、他国の機関が規制に乗り出すこともなく、民間銀行は戦後押し付けられた厳しい規制から脱出するルートを見つけていた
イングランド銀行に入った外為ディーラーのジョージ・ボルトンが、ロンドンにおける規制のない新しいドル市場の創設に奔走 ⇒ ユーロ市場という規制の真空地帯の誕生
最初に恩恵を被ったのは冷戦下のソ連 ⇒ ニューヨークから多額のドル資金を移動。マルクス主義を標榜する国が史上最も規制のない資本主義システムを成長させたことを知ったら、マルクスは仰天するだろう
ユーロダラーの誕生こそ、86年のサッチャーによるビッグバンよりも遥かに大きな変革
銀行や世界の富裕層代表たちが、他の人々の犠牲の上にただで利益を得るというのが、オフショア・システムの基本的な仕組み

第6章     クモの巣の構築
カリブ海地域におけるオフショア・システムの起源は、犯罪組織がアメリカの税制に関心を持った時に遡る ⇒ 1931年カポネが脱税で有罪判決を受けると、彼の同業者で『ゴッドファーザー』のハイマン・ロスのモデルとされるマイヤー・ランスキーは、マフィアの金を国外に持ち出し洗浄したうえで国内に戻す仕組みを作ることに関心を持ち、32年スイスに預金口座を開き、金を足のつかない資産に変えた上で国外に持ち出し、換金してスイスの預金口座に入金、銀行はその金を見返りにギャングに貸し付ける。さらに37年にはキューバでカジノを経営、マフィアのためのマネー・ロンダリング・センターとして活用。次いで61年にはイギリス植民地のバハマに目をつけ、南北アメリカのダーティーマネーを集める。65年にバハマで人民主義者が政権を取得、73年に完全な独立を勝ち取ると、オフショアのプレイヤーは一斉に逃げ出し、別なイギリス領だったケイマン諸島に移動
イギリスの官僚機構内部では意見が2つに割れていた ⇒ タックスヘイブンに反対する大蔵省、特に内国歳入庁と、新しい仕組みを声高に応援していたイングランド銀行や海外開発省が激し論戦を繰り広げる ⇒ イギリスが守られる限り、他国の資産が略奪されることには何の異存もなかった
カリブ海地域と同様、ジャージーでもオフショア金融は60年代から盛んになる
78年に中国が市場改革と輸出促進の「開放政策」を打ち出すと、香港は急速に発展 ⇒ 97年の返還後も中国はこのオフショア・センターを「特別行政区」として存続させた
60年代以降、イギリスの金融機関がイングランド銀行に主導されて、オフショアの活用という考えに走ったが、それがいつからどのようにしてクモの巣戦略にまとまったのかは不明 ⇒ 密かに奨励しつつ現場で事実が先行していたというのが現実
76年 ケイマンの銀行家がマイアミでアメリカ政府から召喚令状を渡されたのを機に、ケイマンでは機密関係(保護)法が成立、ケイマンにおける金融・銀行取引の情報を明かすことが禁固刑の対象になる犯罪とされる

第7章     アメリカの陥落
アメリカには以前から外国の秘密資産を預かる仕組みがあった ⇒ マイアミの中南米資産で、金利の対外支払いは非課税
ケネディ時代に金利平衡税で資本流出を抑えようとしたが、史上初の資本流出規制に怒った企業は、逆にオフショアのユーロ市場に逃避、政府も妥協して「繰り延べ税金」の概念を受け入れ、本国に送還されない限りオフショア資金は非課税とされた
79.8. オイルショック後のインフレからドルの価値が急降下、カーター政権は金融引き締め論者のヴォルカーをFRB議長として引き締め策を実施、オフショア・システムにおける規制のないマネー創造を他国に取り締まらせるための国際協力を呼びかけるが、ニューヨークの銀行がイギリス・スイスと協力して対抗した結果、81年には新しいオフショアの形態としてIBFを認め、アメリカ自身もオフショアにのめり込む
97年にはQI制度(適格仲買人制度)導入により、本人確認書類を提出すれば非課税や軽減税率の適用が認められるとするもので、確認作業を外国銀行に委託することにより、アメリカ人以外の情報を保持しないことにして外国への情報開示義務を逃れ、守秘性を高めた
ワイオミングやデラウェア州は、安価で極めて強力な形の守秘性を売っている ⇒ 守秘性、税制に加えて、高利貸し(9章参照)と、州法で規制されるコーポレート・ガバナンスがアメリカの特定の州を企業のヘイブンにしてきた
デラウェア州 ⇒ フォーチュン5002/3が本社を置く。1899年デュポンの法人化の際、企業経営者に大幅な権限・自由を認めるような会社法が制定された
「経営判断の原則」 ⇒ 「企業経営者が重要な行動原則に明らかに違反したわけではなく、彼等の決定が「中立的な意思決定機関」によって承認されている場合には、裁判所は経営者を事後的に批判するべきではない」と言う原則
腐敗度の低い国トップ20のうち半数近くは重要な守秘法域である一方、違法な資金流出の被害国であるアフリカ諸国は「最も腐敗した」国とされている
金融守秘性指数のトップ5は、アメリカ、ルクセンブルク、スイス、ケイマン、イギリス

第8章     途上国からの莫大な資金流出
2次世界大戦後では最もひどい戦争と言われているコンゴの内戦は、タックスヘイブンを通じた同国の鉱物資源の大量略奪と深く結びついている
多くの途上国に見られる大規模な腐敗や犯罪勢力による政府の転覆は、オフショアが重要な役割を果たしている
偽情報で株価を吊り上げた後、無防備な一般大衆に売却して利益を得る「パンプ・アンド・ダンプ」のような詐欺行為では、首謀者は必ずオフショア法人の陰に隠れる
1988年のBCCI(国際商業信用銀行)事件 ⇒ 72年インド生まれの銀行家がルクセンブルクに設立したオフショア専門の銀行。アングラビジネスや違法手段にのめり込み、91年破綻。オフショアの守秘性を悪用した好例
2001年アンゴラゲート事件 ⇒ アンゴラのオイル・マネーを見合いに独立運動のために武器密輸のための融資の返済に絡んで、不正が行われ、莫大な金が闇に消えた。貧困削減や腐敗の低減を額面上は優先する現行のIMF・世界銀行のアフリカ<国際管理>体制に対して、米国とフランスの国家利権が優先された結果、極端な腐敗政権が実質上放置・温存されている。アンゴラのケースはアフリカにおいても極端な例であるが、だからこそ端的に、アフリカの資源大国の国際政治上の位置を表現している。こうした状況において「経済成長」が「貧困削減」を伴って進行することは不可能である。
197008年にアフリカから違法に流出した資金の総額は最低でも8,540億ドル
二重課税の問題も途上国を不利な立場に追い込んでいる ⇒ 外国からの投資に対し二重課税防止条約を締結して途上国では非課税とするが、利益をオフショアに潜り込ませることで本国でも非課税としてしまう

第9章     オフショアの漸進的拡大
高利貸しは歴史的にも忌まわしい行為とされおり、アメリカでも貸出金利は厳しく規制していた ⇒ 1978年連邦最高裁が、ネブラスカ(貸出上限金利18)の銀行がカード業務でミネソタ(12)の顧客に18%を適用できると裁定、80年にサウスダコタ州が上限金利を撤廃。さらにデラウェアが大銀行誘致のために上限金利撤廃に加えて逆進課税制度(金融子会社は州税免除)を盛り込んだ金融センター開発法を成立させ(81)、デラウェアでのクレジット・カード産業が急成長
デラウェアは、有限パートナーシップ法を成立させ、証券化ビジネスでも企業が望む通りの法的枠組みを整えることによって誘致に成功

第10章  抵抗運動
98年のOECD報告書で、タックスヘイブンが大きな害をもたらしていることを認めた ⇒ オフショア活動が他国の課税基盤を蝕み、貿易や投資のパターンを歪め、課税制度全般の公正さ、中立性、幅広い社会的受容を損なっている。このような有害な租税競争は世界の幸福を減少させ、課税制度の完全性に対する納税者の信頼を損なっている
初めて行われた守秘法域に対する本格的かつ持続的な知的攻撃であり、翌々年のフォローアップ報告書では35の守秘法域のブラックリストと、襟を正さないタックスヘイブンに対しては「防衛策」を採るという脅しが含まれていて、クリントン政権も支持していた
租税競争が途上国の税収を破壊し、途上国の援助への依存度を高めている
豊かな国は低所得の国々を犠牲にして、国際貿易の利益に対する租税のより大きな分け前を確保してきた

第11章  オフショアの暮らし
オフショアで犯罪者や腐敗した政治家の財産隠しに加担したプライベートバンカーは、自分たちの行為をどのように正当化しているのか ⇒ 誰かの助けになっているという満足感の一方で、自分の関係しているシステムが世界の貧困を永続させる働きをしていることに気付くとともに、良心の呵責が日増しに強くなり、強い孤独感にさいなまれ、バハマからアメリカに戻った

第12章  怪物グリフィン
シティ・オブ・ロンドン・コーポレーション(ロンドン市の行政府、通称コーポレーション・オブ・ロンドン)と真っ向から対決して見つけた社会的沈黙の背後には、グローバル金融の歴史の最も驚くべき物語が潜んでいる
ロンドン最大の自治区の一つ、シティ(City of London)は、ニューヨークのウォール街と並ぶ金融の中心地。1平方マイル(約2.6平方キロメートル)という狭い地域に証券取引所、イングランド銀行を始め多くの金融機関が並ぶ。居住人口5000人に対し、昼間の就業人口は50万人に上る(2005年)。コーポレーション・オブ・ロンドンは、この地域(通称“Square Mile”)を統治し、独自の警察を持つ特別行政府である。一般に「ロンドン」という場合は、グレーター・ロンドン(Greater London Authority/GLA)のことであり、シティを含む33の自治区で構成される大都市圏を指す。
コーポレーション・オブ・ロンドンのなりたちは中世にさかのぼる。イギリス最古の地方公共団体で、市会(Court of Common Council)という議会構造をもち、その仕組みはイギリス議会の発祥より旧い。イギリスの政治制度全体がある意味此処から生まれている
市会には政党などの政治団体は存在せず、市長(The Lord Mayor)、24人の長老議員(Aldermen)と、112人の市会議員(Common Councilmen)から構成され、実質的な行政執行機能を有している。その長い歴史の中で、選挙制度を含め他の地方団体とは異なる自治制度が形成されている。国家の中の国家として機能
コーポレーション・オブ・ロンドンを統括する市長(The Lord Mayor)は、1546年以来毎年、聖ミカエル祭(929日)に選出される。任期は1年。長老議員による長老会議で承認される。また、市長の役割は、コーポレーションの首長のみならず、シティ司令官、ロンドン港提督、シティ大学学長などを兼ねる。
なお、コーポレーション・オブ・ロンドンの代表であるThe Lord Mayor(市長)と、GLAの首長であるMayor of London(ロンドン市長)と異なるポジションである。
現代のイギリスには成文憲法(constitution)はないが、一部歴史家は古くからの権利や特権や自由を伴う古くからのコンスティテューション(政体)という言い方をする。これは国の様々な柱の権限や影響力の範囲や柱と柱の関係の変遷について言う言葉で、古くからの政体の4つの柱について、国王はそのリーダー、教会はその魂、議会は国民、シティはカネと言い表す。シティは国王や議会に従属しているというよりも、それらの柱と複雑な政治的関係で結ばれていた。1066年にウィリアム征服王がイングランドに侵攻した際、他の都市がこぞって権利を放棄する中で、シティは自由保有不動産や昔からの特権や自身で組織した民兵を保持し続け、シティに入る時は国王でさえ武器を置かねばならなかった
18世紀には、シティは独立を求めるアメリカの植民地との戦争に反対し、猛烈なロビー活動を展開し、国王も「私の臣民が北米の反抗心をけしかけるとはこの上ない驚き」と嘆いた
労働党政権は何度となくシティのロンドン市への統合を画策したが成功せず、1946年漸くアトリー首相がイングランド銀行の国有化に成功(イングランド銀行は1694年、主として海軍建設のための信用を提供する目的でプロテスタントのシティの豪商たちが出資して民間機関として設立。この銀行の誕生と国家債務の創出が金融革命の先導役となって、瞬く間に金融市場が出現、海外貿易が急拡大した) ⇒ 国有化法は同行の役割や目的には全く触れておらず、依然としてイートン校OBのマーチャント・バンカーたちによって引き続き運営されていた
ブレアの労働党政権誕生の際は、党80年来の政策だったシティ廃止から「改革」に後退、もともとシティの統治機関である市民会議の投票権は9000人余りの居住者と23千の企業に与えられていたところ、改革案は企業の投票権を従業員数に応じて32千に増やすというもの
莫大な資産を保有して、収益金で様々な活動をしているが、実態は誰にも計り知れない
イギリス国教会の若い司祭が、市民会議に立候補して当選し、追求しようとしたが暖簾に腕押し(追求に伴ってキャリアを棒に振った)、人間の強欲さを超えた何かが作用。「我々は極めて悪魔的な何かに支配されている。制度はそれを生かし続けており、それは我々全員の一部になっている。私はそれを悪魔的精神と見なし、その精神をグリフィンと呼ぶ」。グリフィンはシティの紋章に描かれている神話上の生き物で、シティの入り口にはその像が置かれている
恣意的な国王の権力に対する抑止力として機能してきた輝かしい歴史はあるものの、市民がそれに気づくのを恐れてあまり宣伝しないよう心がけている
シティにとっての自由とは、満足できる条件で貿易する自由のことであったし、今では金融業界の利益のために、必要な場合はこの国の他の人々の利益に反してでも、自由を守ることに変わってきている ⇒ 「自由」と言う言葉の相反する二面性
1970年代のオフショアの急成長まで100年近くに渡り、イギリスの銀行はそのバランスシートを、自国経済の支出と歩調を合わせて慎重に拡大し、銀行の合計資産をGDPの約半分に維持していたが、70年以降すべてが変わった。シティの新しい帝国プロジェクトの元で、マネーはロンドンに押し寄せ、それからパッケージし直されて大抵はオフショア・サテライト経由で再び送り出され、ドバイのきらびやかな高層ビルやニューヨークの金融詐欺ゲームに使われている
現代のシティ・オブ・ロンドンの価値観、オフショア金融の価値観が我々全員につきつけている挑戦 ⇒ 我々は悔い改める必要がある。我々は集団としての幸福を追い求めるプログラムの虜になっているが、そのプログラムは幻想だ。それは実体のない幻であり、我々を隷属させることになるだろう

ロンドンのオフショアとしての魅力
   寛大なガバナンス
   守秘性 ⇒ オフショア法人がイギリス企業の取締役になることが法的に認められているため、本当のオーナーが誰なのかを突き止めるのは通常不可能
   ドミサイル(永住権) ⇒ 元々は植民地の住人が帝国内のどこに住んでいても身元を証明できるようにするために編み出された制度。1914年税制を捻じ曲げて、イギリスの居住者だがドミサイルがイギリスではない人々は、世界全体から得る所得について課税を逃れられるようになった(イギリスで得た所得に対してのみ課税)。現在6万人のノンドミサイルがいる。課税逃れのためにノンドミサイルになるケースもある。居住者54人の大富豪は1260億ポンドの資産に対し14.7百万ポンド(2/3は掃除機発明家のダイソン1人が払っている)の所得税しか払っていない
   世界の通商を規制する機関やそれに影響を及ぼす機関の多くが事務所を構える ⇒ 国際会計基準審議会(IASB)本部

むすび われわれの文化を取り戻そう
「われわれはデリケートなマシンの制御に失敗して壮大な混乱に陥っている。このマシンの仕組みを我々は理解していないのだ」――ケインズのこの言葉は29年のウォール街崩壊の直後に発せられたものだが、今日の状況にもぴったり当てはまる
現代の金融マシンを理解しようとすれば、オフショアについて理解することが欠かせず、いまこそオフショアに係る諸問題に関し本腰を入れて取り組むべき時だ
1.    透明性の向上 ⇒ 企業はどの国で活動する場合でもその国民を代表する政府から活動の許可を得る。そしてそのお返しに会計報告をする義務を負う。これがstewardship(受託責任)accountability(説明責任)の最も重要な点。多国籍企業に対しても財務情報を国別に表示することやそれぞれの国での活動内容を開示することを義務付けられたら、グローバル市場の透明性は直ちに高まるはず。同時に自国の市民が他国で得た所得や保有する資産についての情報を諸国の政府が互いに共有するシステムも必要
2.    途上国のニーズを優先させる改革 ⇒ 租税は開発のための資金調達にとって最も持続可能で最重要最有益な方法。途上国の課税基盤を蝕む多国籍企業などの行為を見逃してはならない。開発援助も貧困を緩和するどころか悪化させる恐れのある使われ方をしている
3.    グローバル・オフショア・システムの最も重要かつ侵略的な要素であるイギリスのクモの巣の解体 ⇒ シティ・オブ・ロンドンの解体。途上国の自覚が必要
4.    オンショアの租税制度の改革 ⇒ 地価課税(土地のレント価値への課税)と、石油等国が鉱物資源から得るレントの大部分をすべての国民に分配する仕組みはどうか
レント:不労所得。駅を新設したら周辺の地価が上がるようなもの
5.    リーダーシップと一方的な行動 ⇒ 9.11の直後アメリカの議会は、金融業界の反対を押し切って、外国のシェルバンクからの送金受入れ禁止を決議。一方的な行動でも功を奏することがある
6.    仲介業者や個人のオフショア利用者への対処 ⇒ オフショアの詐欺行為を幇助する銀行、会計士等の仲介業者も同罪であり、課税に関しては合算課税(企業グループを単一の組織として扱い課税対象所得を活動地域に割り当てて課税する方法)が有効
7.    金融部門の改革 ⇒ タックスヘイブンが金融資本の堅固な避難場所になっていることを広く知らせてその弊害を洗い出す
8.    企業の社会的責任の見直し ⇒ 企業に与えられた特権との見合いで、課せられた義務の履行を見直す。特に透明性確保と納税の義務が重要
9.    腐敗についての見直し ⇒ 腐敗の本質は、インサイダーが秘密裏に何の処罰も受けずに公共の利益を害し、公共の利益を促進するルールやシステムを蝕んで、それらのルールやシステムに対する我々の信頼を損なうことにあるという観点から見直して、徹底的に排除することが必要
10. 最も重要な点として、我々は文化を変える必要がある ⇒ 何が我々にとって重要なものかという価値基準を見直して、タックスヘイブンに係る事象を再考すべき

リーマンショック後、世界中で積極的な財政出動が行われたことでグローバル金融のメルトダウンとそれに続く完全な経済崩壊は回避されたように見えるが、それは納税者に途方もない犠牲を払わせてきた
タックスヘイブンについてのグローバルな議論を真剣に始めてもよい頃 ⇒ 民主的な政府を蝕み、その課税基盤を損ない、政治家を腐敗させている。巨大な犯罪経済を維持し、法人の力と金融の力を持つ新しい、説明責任を負わない貴族階級を生み出している。金融の守秘性を抑え込み、制御するために力を合わせて行動しなければ、つい直前にもアフリカで目にした、人当たりの良いインサイダーたちが何の処罰も受けずに富を略奪する国際的な共謀と絶望的な貧困の世界が、われわれが子供たちに残す世界になるだろう


タックスヘイブンの闇 ニコラス・シャクソン著 世界の「守秘法域」を網羅的に調査 
日本経済新聞朝刊2012年4月15日付 書評
フォームの終わり
 衝撃的な内容である。一読すれば、英米主導の国際金融制度改革に懐疑的にならざるを得ないだろう。秘密性が高いために、システマティックな研究がほぼ不可能なテーマなので、勇気あるジャーナリストによる調査報道がここまで網羅的にできたことは称賛すべきだろう。
(藤井清美訳、朝日新聞出版・2500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
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(藤井清美訳、朝日新聞出版・2500円 書籍の価格は税抜きで表記しています)
 ロンドンの金融街=シティを中心として、何重かの同心円状に、旧植民地が情報公開を拒む「守秘法域」の「蜘蛛(くも)の巣」をつくっている。ジャージー島、ケイマン諸島から香港に至るタックスヘイブンに、世界のブラックマネーが流れ込み、洗浄されてロンドンに現れる。ここまでは想像のつく方も多いだろう。
 しかし、シティは、単に自由化が進んだ金融市場ではなかった。通常の国内法が及ばない「国の中の国」であり、かつてはBank of England(英国中央銀行)が守護者であった。この地区を統治するCity of London Corporationは摩訶(まか)不思議な存在で、王朝期以来度重なる干渉をはねのけて、ブレア政権期にもその守秘性を高めたという。
 アメリカでも、東部の小さなデラウェア州がビジネス界に歓迎される立法を繰り返し、多くの大手企業の本籍地となっている。連邦制という分権システムを利用した実質上のオフショア化である。クリントン政権が金融自由化を完成させた時に、規制監督を全国統一しなかったので、デラウェアにとっては理想的な環境ができあがった。数世紀も前の「山猫銀行」を彷彿(ほうふつ)とさせるような金融機関が現存してきたのである。
 シティとつながる各タックスヘイブンは形式上は英国の支配下にない。米国も連邦制は建国以来の民主的な伝統だし、連邦レベルではクリーンだと十分主張できる。クリーンな面での規制強化を世界的に推し進めながら、裏口への規制強化は骨抜きに終わってしまったのだとすればどうだろう。
 「守秘法域」は金融危機の主因ではないが、危機を助長したし、大多数の企業や人々にマイナスの存在であることは否めないだろう。客観的な確認はできないが、説得的な内容が多い書として評価できよう。
(神戸大学教授 地主敏樹)


Wikipedia
タックスヘイブン[1]tax haven)とは、一定の課税が著しく軽減、ないしは完全に免除される国や地域のことである。租税回避地(そぜいかいひち)とも呼ばれる。
「ヘイブン」 (haven) は、英語で「避難所」の意である。フランス語ではパラディ・フィスカル(paradis fiscal)と、「paradis=天国、極楽」という語があてられている。

起源 [編集]

タックスヘイブンは、小さな島国など産業が発達しない国が、国際物流の拠点となることを促進するために作った制度である。貿易の拠点となれば定期的に寄港する船乗りなどが外貨を消費するため、海洋国家にとっては有利な方法だと考えられてきた。したがってタックスヘイブン税制が適用される業種は、本来は物流セクターであった。[要出典]

現状と課題 [編集]

国際金融取引を活発化させる目的で一定の減税措置や外国資本企業は登記費用のみで法人税がかからない会社設立方法・通貨決済方法が設けられることは珍しいことではない。そのような意味では、世界最大の実質タックスヘイブンはロンドンのシティ・オブ・ロンドン金融特区であるといわれる。しかし、タックスヘイブンといえば、通常は、英国領ケイマン諸島のような、国際金融取引の単なる中継地として利用されることを想定したような、それ自体は特に見るべき産業のない島国が想定される。しかし、ケイマン諸島の外国資本企業法人税減免システムは実は宗主国英国のシティ・オブ・ロンドンの課税システムをそのままもってきたものである。
一方、現在の国際金融取引においては、租税負担の軽減を目的として、多くの資金がタックスヘイブンを経由して動いており、もはやタックスヘイブンは必要不可欠な存在であると考えられている。その一方で、タックスヘイブンを利用した租税回避スキームに対して各国は、いわゆるタックスヘイブン対策税制を整備してこれに対抗しようとしているものの、根絶にはほど遠い状況である。
また、一部のタックスヘイブンには、本国からの取締りが困難だという点に目を付けた、暴力団マフィアの資金や第三国からの資金が大量に流入しているといわれている(マネーロンダリング)。2007年からの世界金融危機では、金融取引実態がつかみにくいことが災いし損失額が不明瞭化、状況悪化を助長したとして批判されている。

定義 [編集]

一元的・明確な定義はない。デラウェア州の法人税制やLLCの税制から判断するとアメリカ合衆国が世界で最も悪質なタックスヘイブンであると唱える者もいたりするほどである。実際、デラウェア州の法人制度や税制は世界中のタックスヘイブンのモデル・手本となっており、それ以前にタックスヘイブンを実現可能な制度・税制は世界に存在しなかったことからも、北米でもっともキャシュフローが巨額なタックスヘイブンは実はアメリカ・デラウェア州である。また、独立国家の制度・税制に他国がとやかく言うのは内政干渉であるという説もあり、タックスヘイブンと呼ぶこと自体が差別的あるいは内政干渉であるという意見も存在する。ここでは、例として、経済協力開発機構 (OECD) と日本のタックスヘイブンの基準を以下に示す。

OECDによる規定 [編集]

経済協力開発機構 (OECD) では、下記(イ)に当てはまり、かつ下記(ロ)の (a) - (c) のいずれか一つでも該当する非加盟国・地域を「タックスヘイブン」と認定し、有害税制リストに載せている。
§  (イ) 金融・サービス等の活動から生じる所得に対して無税としている又は名目的にしか課税していないこと。
§  (ロ)
§  (a) 他国と実効的な情報交換を行っていないこと。
§  (b) 税制や税務執行につき透明性が欠如していること。
§  (c) 誘致される金融・サービス等の活動について、自国・地域において実質的な活動がなされることを要求していないこと。

日本の法律による規定 [編集]

租税特別措置法は、法人税の実効税率が25%以下(平成22年税制改正後は20%以下)となる国や地域を、事実上タックスヘイブンと認定している。

各国政府による対策 [編集]

タックスヘイブンを用いた租税回避について、多くの国や地域ではその対抗策を講じようとしている。

主なタックスヘイブン一覧 [編集]

いずれもOECDの発表による。

OECD国際フォーラム調査による国際的に認められている税基準の実施状況に関する進捗レポート[2] [編集]

国際的に認められている税基準を約束したが、実施が十分でない国・地域 [編集]

タックスヘイブン [編集]
§  アンドラAndorra
§  アンギラAnguilla
§  アンティグア・バーブーダAntigua and Barbuda
§  アルバAruba
§  バハマBahamas
§  バーレーンBahrain
§  ベリーズBelize
§  バミューダ諸島Bermuda
§  イギリス領ヴァージン諸島British Virgin Islands
§  ケイマン諸島Cayman Islands
§  クック諸島Cook Islands
§  ドミニカDominica
§  ジブラルタルGibraltar
§  グレナダGrenada
§  リベリアLiberia
§  リヒテンシュタインLiechtenstein
§  マーシャル諸島Marshall Islands
§  モナコMonaco
§  モントセラトMontserrat
§  ナウルNauru
§  オランダ領アンティルNetherlands' Antilles
§  ウエNiue
§  パナマPanama
§  セントルシアSt. Lucia
§  セントビンセント・グレナディーンSt. Vincent & Grenadines
§  サモアSamoa
§  サンマリノSan Marino
§  タークス・カイコス諸島Turks and Caicos Islands
§  バヌアツVanuatu
その他の金融センター [編集]
§  オーストリアAustria
§  ベルギーBelgium
§  ブルネイBrunei
§  チリChile
§  コスタリカCosta Rica
§  グアテマラGuatemala
§  ルクセンブルクLuxembourg
§  マレーシアMalaysia
§  フィリピンPhilippines
§  シンガポールSingapore
§  スイスSwitzerland
§  ウルグアイUruguay
(参考)当初、国際的に認められている税基準を約束しなかった国・地域(現在は約束) [編集]
§  コスタリカ/Costa Rica
§  マレーシア(ラブアン)/MalaysiaLabuan
§  フィリピン/Philippines
§  ウルグアイ/Uruguay

タックスヘイブン・リスト(20006月付) [編集]

§  カリブ
§  オセアニア
§  ヨーロッパ
§  その他

非協力的タックスヘイブン・リスト(2002418日付) [編集]

§  アンドラ
§  リベリア
§  リヒテンシュタイン
§  マーシャル諸島
§  モナコ
§  ナウル

非協力的タックスヘイブン・リスト(200942日付) [編集]

20006月以前に2005年までの有害税制除去を約束した国・地域 [編集]

§  バミューダ諸島
§  ケイマン諸島
§  サンマリノ

脚注 [編集]

1.  ^ 日本経済新聞ブルームバーグを始め、多くの日本語メディアでは、「タックスヘイブン(租税回避地)」との記載が一般的である
2.  ^ いわゆるタックスヘイブン・ブラックリスト。2009519日付



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