雪  谷崎潤一郎  2012.7.1.

2012.7.1. 雪                            (昭和238月記)

著者  谷崎潤一郎 

発行日           2001.12.25. 印刷             1.10. 発行
発行所           中央公論新社(中公クラシックス) 中央公論社刊『谷崎一郎全集』第20(1982.12.)、第21(1983.1.)、第22(1983.6.)からの転載

京と大阪では三味線(三弦)の構造が違ってい、従ってその音色にもいちじるしい相違があって、大阪の方は鈍いものうい音が少なく、もっとはんなりした響きがある
両者お互いに流行るものが違ったが、大阪の人・峰崎勾当作曲の「雪」だけは京都でも唄われている
古典の歌詞は、前後の章句がポツリポツリ切れていて連絡がなく、作者一人合点のような文句が多くて何のことやら意味の通じ兼ねるいい廻しがしばしば用いられているが、それでも三味線の手をつけ、合の手や手事(地歌箏曲胡弓楽において、歌と歌の間に挟まれた長い器楽部分)などをはさんで見ると、却ってこういう連絡のないいい廻しの方がおもしろい場合がないでもない
上方の地唄の中の唄ものの演奏時間は12,3分、1曲を唄い終る間に茶が立てられる
「茶音頭」と同様、茶道と関係が深かったことが察せられる

先年の戦争の期間中に、『細雪』の上巻と中巻とを書き上げたほかにはこれという仕事もせずにしまったが、消閑の具として亜蓄音機の他にラジオを聴くぐらいなものだったので、浪花節を除く他のものは随分いろいろと聴いてみた。そして結局ピアノが一番好きになってしまったのは自分でも意外。年を取ってから新しい楽しみが1つ殖えたことは何としても嬉しが、これは明らかに疎開生活が遺して行ってくれた賜ものといってよかろう、そうはいっても本当に自分の魂を「心の故郷」へつれて行ってくれるものは、やはり「雪」や「残月」のような自分の国の古典音楽に限る



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